原子炉の危機的状況を伝えない東電とマスコミ
1週間ほど東京に行ってきた。ネオンが消え、駅などのエレベーターの多くが止まっているし、電車は空調も止めている。コンビニもスーパーも照明を減らしてうす暗い。いつもと違うのは、あちこちで省エネに取り組んでいることと外国人の姿をほとんど見かけないことくらいだろうか。人々の生活を見ている限り、原発事故の危機感は伝わってこない。どうやら「原発事故の処理は時間がかかるものの、これ以上悪化せずに何とか収束するだろう」と楽観的に考えている人が大半のようだ。そう願いたいものだが、私にはとてもそう思えない。
日ごろはテレビをほとんど見ないのだが、東京にいる間のニュースはテレビが中心だった。それで思ったのは、相変わらず御用学者ばかり登場させ、肝心なことをちっとも伝えないマスコミの酷さだ。テレビがさかんに伝えているのは、放射能に汚染された水の処理のことばかり。もちろんそれも大問題だが、昨日の汚染水の海への放出で私は原子炉の危機的状況を感じとった。いったい原子炉はどんな状態にあるのだろう? テレビを見ていてもそのことが全く伝わってこない。それどころか、インターネットの情報などに惑わされないように注意喚起しているのだから、呆れかえる。現場はもはや高濃度の放射線と次々と襲いかかる難題でパニック状態になっているのではないかと勘繰りたくもなる。
テレビニュースばかり見ている市民は、原子炉が危機的状況に陥っていることがわからないのも当然だ。外国人の多くが東京から姿を消したというのは、恐らく放射能に対する危機感が強いとか避難しやすいということだけではないだろう。原発事故の危機的状況については海外のほうがきちんと把握しており、自国民にはっきりと警告しているのではなかろうか。
小出裕章さん(京都大学原子炉実験所)は昨日(4月5日)のラジオ放送で、すでに原子炉は再臨界になっているのではないかと疑っているという恐るべき話しをしている。そう考える理由はヨウ素の濃度が増えてきていることと、クロール(塩素)38が検出されていることだという。クロール38は、再臨界が起きていると考えないと説明がつかないそうだ。それが間違いないなら、事態はますます深刻化していることになる。
以下の小出氏の話を聞いてほしい。
マスコミが原子炉の状況をほとんど報じなくなり、汚染水の処理に話題を集中させているのはあまりにも不気味だ。東京電力も保安院も政府もマスコミも共謀して事実を隠ぺいしているとしか思えない。もし再臨界の可能性などということを報じたなら、パニックに陥るという判断をしているのだろう。しかし、国民に正確な情報を伝え、大量の放射能が放出される前に避難できるように準備してもらうのが東電や政府の責任ではないだろうか。いつまで国民を騙し欺きつづけるつもりなのだろう。
今はとにかく水で原子炉を冷やし続けなければならないのだが、現時点では放射能の放出が止まるなどということはなさそうだし、海は汚染され続けている。この上、もし最悪の事態になったなら爆発的に放射能が大気中に放出されることになる。テレビで安心情報ばかり流し続ける御用学者には憤りを覚える。東電と御用学者、御用マスコミの責任は果てしなく重い。
以下、御用学者と御用マスコミに関する記事もお読みいただきたい。この国はもはや回復不能の末期的症状に陥っているとしか言いようがない。
【4月7日追記】
YouTubeが削除されたので、話しの内容を文字にしたサイトを以下に紹介しておく。こちらをお読みいただきたい。
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