無視される最悪のシナリオ
テレビはほとんど見ないのだが、ラジオのニュースはときどき聞いている。それで感じるのだが、最近、原発事故のニュースの扱いが小さくなっているのではないだろうか。世界中に放射性物質をまき散らし、東電や原子力安全・保安院などが連日会見を開いている大事故だ。それなのにテレビは相変わらずお笑いバカ番組を一日中放送し、原発事故については陰が薄くなっている。
こんなマスコミ報道ばかり聞いていると、「このまま徐々に収束するのだろう」と安心してしまう人も多いだろう。しかし、福島第一原発が危機的状況にあることは何も変わっていない。汚染水の処理もはかどらず、むしろ悪い情報ばかりだ。「小出裕章(京大助教)非公式まとめ」というブログがあるが、このブログの以下の記事によると、小出氏は今も水蒸気爆発という最悪の事態の可能性を否定できないと話している。ところが、東電の説明やマスコミのニュースには「爆発」とか「最悪のシナリオ」などという言葉はまったく出てこない。最悪の事態についての予測を意図的に回避しているのだ。
今日は、20日に3号機原子炉建屋の近くから900ミリシーベルトという高濃度汚染された瓦礫が見つかっていたと報じられた。20日に分かっていながら、報道されたのは3日もたってからだ。また、東京電力が建屋周辺の約150カ所の放射線量を測定した「汚染マップ(サーベイマップ)を初めて公表したという。このマップは東電が3月下旬から作成し、定期的に更新して原子力安全・保安院など関係機関に提出していたそうだが、今まで国民に隠していたのだ。
建屋の周辺にある汚染された瓦礫の撤去は、完了までに何と半年ほどかかる見込みだという。そういうことがとっくに分かっていながら、17日に希望的観測による工程表を出していたことになる。こういう東電の隠蔽体質には辟易とするし、何も信じられなくなる。
木下黄太さんというジャーナリストの方が、以下のようなブログ記事を書かれている。
チェルノブイリをみて、東京からいつ退避するべきなのかを考える
「東京から退避」などといったら、「なにを大げさな」とバカにする人が大勢いるだろう。しかし、もし小出さんの心配する水蒸気爆発が起きてしまったなら、東京とて安全ではない。もちろんそうならないことを願うばかりだが、コントロール不能に陥っている原発が4基もあり、収束の見通しがまったく立っていないのだ。最悪の事態にならない保障など何もない。もしそうなってしまったら、少しでも被ばくから逃れるためには東京から退避するしかない。今の福島の状況を見ていれば、政府が適切に避難区域を設定し、避難した人たちの生活の保障を全面的にしてくれるなどということはありえないだろう。被ばくして健康被害が生じても、政府が保証するなどということは考えられない。
だから避難できる人は自分で情報収集し、最悪の事態を想定して備えておくことも必要だと思う。国民に事実を迅速に公表しないような国にいる限り、自分や家族の身は自分で守るしかないのだ。ただ、爆発が起こったらパニックになって、公共交通機関は大混雑になるだろう。
自主的に退避できる人はまだいい。仕事、生活、行く先のことなどを考えたなら大多数の人は簡単に退避などできないだろう。また、最後には何よりも自分で移動できない弱者が取り残されてしまう。これが原発事故の現実なのだと思うと、背筋が凍りつく思いだ。
行きつくところは、原発をつくったことの過ちだ。原発を推進してきた人たちだけではなく、私たち一人ひとりがこの原発事故と真剣に向き合い原発の廃絶を考えなくてはならない。
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