原発の危険性を訴えてきた技術者たちは「村八分」にされた
福島第一原子力発電所の大事故を受けて、原子力資料情報室ではインターネットで連日のように事故についての情報提供を続けている。そこで説明をしている後藤政志さん(元東芝の原子炉格納容器の耐性研究グループ長)、小倉志郎さん(元東芝で第一原発の設計担当)、田中三彦さん(元日立グループ社員、科学ライター)らこそ、原発の危険性を訴えてきた技術者だ。
テレビなどのマスコミは事故が起こった直後に御用学者ばかりを登用したのだが、かれらは具体的なことになるとほとんど答えることができず、ときには嘘も織り交ぜて安心させるようなことばかりを繰り返した。しかし、後藤さんらがインターネットで詳しい説明を繰り返したり、外国特派員協会で記者会見をして海外に事実を知らせたためだろう。その後、ようやく後藤さんなどの技術者もマスコミに顔を出すようになった。
今日の北海道新聞には、「原発開発者ら事故批判 ネットで」という記事が掲載された。三人のコメントを紹介しておこう。
【後藤政志さん】
「フランスは、内圧が上がりにくく、放射能物質が漏れにくい巨大なフィルター付き格納容器を造った。われわれも必要、と議論したが、会社は不採用。コストだなと思った」
【小倉志郎さん】
「高台に建てたり、防水構造にしたりしていれば。想像力が足りなかった」
【田中三彦さん】
「政府や公共放送が危機を正しく国民に伝えていない」
「格納容器内が8気圧になった時、普通は4気圧などと流していた。普通は約1気圧で、4気圧とは事故に備えた設計値だ。8気圧なら異常事態なのに、パニックにしないという配慮が多すぎる」
この記事の最後に書かれているNPO環境エネルギー政策研究所顧問の竹村英明さんのコメントに関わる部分を引用する。
「日本には許認可権を持つ経産省、学者、電力会社などで作る原発ムラがある」という。竹村さんによると、ムラは強力で、疑問や批判を口にする技術者を村八分にする。3人がそうだったという。
おそらくすべての技術者や政府関係者が原発の危険性を知っていたはずだ。しかし、利権に目がくらんだ人たちにとって、原発を批判する技術者たちは邪魔者でしかない。利権集団は、批判者を「村八分」にして口を封じるのだ。これは原発に限ったことではないだろう。
どんなときにも「村八分」にめげずに行動する人がいる。ほんの少数の誠実で責任感のある人たちだ。その人たちの存在がこんなにも浮き彫りにされたこともないだろう。今回の原発事故ではインターネットがあったおかげで、私たちは真実を知ることができた。
「村八分」というこの国に巣食う悪しき習わしを根絶することができるのだろうか? 脱原発を進めるためには、後藤さんらの存在だけでは無理だ。こんな事故を起こしたのに原発にすがりつこうという魑魅魍魎がこの国にはまだまだいる。以下の保坂展人氏の記事を参照していただきたい。
脱原発のためには国民の強い意思と行動こそ必要なのだろう。ところが、この国の多くの人たちは空気を読んで周りに同調することで身を守ることに徹してきた。なかば「村八分」の習慣を容認してきたということだ。日本人一人ひとりがこの意識を捨て去って目覚めなければ脱原発はできないだろうし、同じ過ちを繰り返すのだろう。
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