うつ病に効果的な認知行動療法
7日のNHKクローズアップ現代は、うつ病の精神療法として期待される認知行動療法と日本における現状を紹介する内容だった。
日本では「うつ病」というと、精神科や心療内科で薬物療法というパターンがまだ一般的だ。当然のことながら薬物療法は副作用があるし、抗うつ薬が効かない場合もある。そのような薬物療法を延々と続けることが健康に良いとはとても思えない。何年も薬物療法を続けているのになかなか改善しない人の話を聞くと、暗澹たる気持ちになる。そんな方はいちど認知行動療法を試されるといいと思う。
イギリスでは、うつ病の治療は薬物療法から認知行動療法へと変わってきているそうだが、当然のことだろう。もちろん認知行動療法がすべてのうつ病患者によく効くということではないと思うが、薬物療法だけでは限界がある。また、認知行動療法の場合、薬物療法より再発率が下がるという。日本でもこのような精神療法を積極的に取り入れていくべきだろう。
ただ、日本では認知行動療法はまだ広く知られていないし、だいいち受けられる機関が限られていて費用もかなり高額だ。これでは誰もが簡単に受けるというわけにはいかない。この番組ではそうした現状について触れられていた。
日本では認知行動療法ができる人が非常に少なく、その大半は臨床心理士なのだ。臨床心理士というのは国家資格を持った医者ではない。だから、臨床心理士による認知行動療法は医療行為にはならず保険が適用されない。番組では今年度から認知行動療法も健康保険の対象になったと言っていたが、実際には認知行動療法をやっている医療機関は非常に少ない。しかも、認知行動療法を行うにはそれなりの時間が必要だ。1回30分から1時間くらいは要する。認知行動療法にも診療報酬が出るようになったとはいえ、時間をかける割には診療報酬が少ないため、医者はどうしても人数を稼げる一般的な薬物療法に走るという。
認知行動療法を行える医療機関はほとんどないから、希望する人の多くは認知行動療法ができる臨床心理士がいる民間の心理機関などに行くことにならざるを得ない。では、そのような民間の機関があちこちにあるかといえば、そうではない。北海道の場合、札幌ではこの療法を受けられるところが何カ所かあるが、地方に住んでいる人はまず受けられない。臨床心理士が行う場合は健康保険が使えないので、高額の費用がかかることになる。
こんな状況だから、健康保険が適用されるようになったといってもほとんど意味がない。 つまり、現状では高額な費用がかかるし、狭き門なのだ。日本の場合、臨床心理士の養成に力を入れたり、国家資格にしたり、診療報酬を増やすといったところからやっていかなければ、普及できないだろう。
認知行動療法は、カウンセリングによって偏った考え方を適正な方向へと導いていく療法だ。たとえば、物事を白か黒かのどちらかに決め付けてしまったり、物事を悪い方にばかり考えてしまったり、うまくいかないのはすべて自分のせいだと思ってしまう、といった決めつけや思い込みなどの偏った思考パターンを前向きの思考パターンに変えることで不安を取り除き、精神の安定を取り戻そうという方法だ。だから、うつ病に限らず、いじめなどが原因で不登校になったり、就職に失敗して自信をなくし、ひきこもるようになってしまったような人にも有効だ。
今の日本の社会では、不登校やひきこもりといった社会不安を抱える人やうつ病の人が急増したが、それだけ日本が深刻なストレス社会になってしまったということだろう。今の日本は、このような療法を必要としている人が溢れている。
以下のサイトは、クローズアップ現代でゲストとして話をしていた大野裕氏のサイトだ。認知行動療法について解説されているので、興味のある方は見ていただけたらと思う。「うつ度」のチェックもできる。
ほんとうなら、一刻も早くこんなストレス社会をなんとかしなければならないのだが、それはそれで容易なことではないし、今の民主政権を見ていればとても期待できない。とりあえずは、つらい症状に悩んでいる人が少しでも多くこうした方法で症状を改善してほしいと思うし、国も認知行動療法の普及に力を入れてほしい。
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