黒部川ダムの排砂の真実
ダムの抱える問題のひとつに堆砂があることは、このブログでも何回も取り上げてきた。治水目的のダムの場合、堆砂が進行すると治水機能が低下してしまう。また、発電目的のダムでも堆砂の除去があちこちで行われている。発電目的のダムで堆砂除去がどれだけ必要なのかよく分からないのだが、いずれにしてもダムの堆砂があちこちで深刻な状況になってきているのは確かだ。
堆砂の影響はそれだけではない。たとえば、今とんでもない速さで海岸浸食が進んでいるが、これもダムに土砂が溜まって海にまで流れてこないことが大きな要因のひとつになっている。海岸浸食の凄まじさは、北海道のイソコモリグモの調査で嫌と言うほど見せつけられた。海岸に行く機会があったら、じっくり観察してみてほしい。砂浜がやせ細っていたり、砂丘が段丘状に浸食されている光景がいたるところで見られる。
富山湾に注ぐ黒部川で堆砂対策として始められたのが、ダムに設けられた排砂ゲートからの排砂だ。出し平ダムでは1991年から排砂が始まった。ところがヘドロが流れ出て漁業被害が発生して大問題になり、訴訟に発展した。このため排砂の影響を少なくすることを目的に、2001年から降雨量が多いときに水の流れを利用して排砂放流を行うという方式をとるようになった。上流の出し平ダムでまず排砂放流を行い、そのあとで下流の宇奈月ダムも排砂放流をするという連携排砂だ。
では、連携排砂で問題は解決したのだろうか? どうやら漁業被害は改善されるどころか、むしろ拡大しているようなのだ。ヘドロ化した土砂は川から河口沿岸の海に堆積し、漁業は壊滅的な被害を受けているという。
この排砂をテーマにした「黒部川ダム『排砂』問題を追う」というテレビ番組が、23日の16時からフジテレビ系で放送されるそうだ。番組の内容は以下を参考にしていただきたい。
http://www.fujitv.co.jp/b_hp/fnsaward/19th/10-129.html
私自身も黒部川の実態はよく知らないが、ダムに溜まったヘドロを排出し続けていたなら川や海に悪影響が及ぶことは容易に想像できる。自然状態では少しずつ流れ下っていく土砂を、人工物によって止めてしまえば本来の川の生態系は失われ、かならず何らかの影響が出てくるのだ。こうした事実は、いくら国が隠したくても隠しきれるものではないし、私たちは直視しなければならないだろう。
いちどは中止するといった八ッ場ダムも、また建設の方向に向かいつつあるようだ。こうした流れは八ッ場ダムだけではない。ダムによる弊害を今こそ多くの人が知り、考えていく必要があるだろう。
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