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2010/12/28

弘中惇一郎弁護士の不可解さ

 厚生労働省の文書偽造事件の冤罪被害者である村木厚子さんが、27日に不当な逮捕・起訴で精神的苦痛を受けたとして、国と前特捜部長大坪弘道被告ら3人に対し計3600万円の国家賠償を求める裁判を起こしました。当然のことでしょう。

 ここで気になるのが、村木さんの弁護人を務めている弘中惇一郎弁護士です。弘中弁護士といえばロス疑惑の三浦和義氏の弁護をしたり、薬害事件などを担当していた著名弁護士で、人権派と言われている方です。ところが、先日(12月24日付)の週刊金曜日「金曜アンテナ」に掲載されたジャーナリストの三宅勝久さんの記事で、三宅さんや週刊金曜日らを提訴した裁判で武富士の代理人をしていたのが、この弘中惇一郎弁護士であることを知りました。

 武富士といえば違法取り立てなど悪質な営業手法で知られたサラ金で、この秋とうとう破たんしました。そして、前記の裁判というのは武富士の内情を暴いたジャーナリストや週刊金曜日などの弱小メディアに対して1億1000万円も払えという言いがかり訴訟です。口封じを狙ったスラップですね。この件については三宅勝久さんの以下の記事をお読みください。

武富士事件にみる「名誉毀損ビジネス」言論弾圧に手を貸す弁護士

 武富士の弁護をするということは、武富士の悪質な営業手法を擁護するということです。悪質商法を行っている企業の弁護をしたなら、被害を食い止めるどころか、被害を拡大させることにもなりかねません。悪質企業の弁護をしてスラップを仕掛ける弁護士が、その一方で人権派と認められているのであれば、なんとも不可解です。弁護士の人権意識というのはどうなっているのでしょう。弁護士のモラルが問われます。

 村木さんの弁護人が武富士の代理人を務めた弘中弁護士ですが、その一方で、大坪被告の代理人は武富士の代理人をしたほか、文芸社という悪質出版商法を行っている企業の代理人も務めた田宮甫弁護士(これについては「検察の裏舞台と弁護士」を参照)。傍目からみたらちょっと不思議な関係ですが、この弁護士さんたちは、いったいどういう意識で代理人をしているのでしょう。

 いずれにしても、弘中惇一郎弁護士が悪質企業の肩を持ちスラップを仕掛けたこともある弁護士であることはあまり知られていません。弁護士が正義の味方、弱者の味方であるなどというのは幻想でしかないでしょう。もちろん、消費者、弱者の立場になって誠実に仕事をされている弁護士さんもたくさんいるのですが。

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政治・社会」カテゴリの記事

コメント

こんにちは、弘中弁護士のことをしらべていて、こちらのブログにたどり着きました。

私の77歳の母親は電話による勧誘からはじまり、何度も寒い中を訪ねてくる営業の青年がかわいそうになり、少しくらいなら、と思って、オプション取引を始めてしまい、老後のための貯蓄およそ1000万円を奪われました。
預金をなくして私に打ち明けた時に
「どうして早くに相談しなかったの?」
と聞きますと
「だってどうやって説明したらいいかわからなかったの、相手の人たちはだんだん怖くなってくるし」
と答えたのが不憫でした。

充分に理解していない取引をさせ、(もちろん、充分理解しています、などの念書を書かされた上で)今後わずかな年金だけで老後をまかなうのは無理なので、いろいろと考えた結果、訴訟を起こしました。

相手方の弁護士が「弘中淳一郎弁護士」だったのです。

まだ、裁判は途中であり、今後どうなっていくかはわかりません。
裁判は時間がかかりますので、貯金を失ったショックですっかり気力の衰えた母が、生きていられるかどうかわかりませんが、母を支えながら、戦うつもりでいます。

でも、「人権派」といわれる弁護士さんが記憶力、理解力の低下した年寄り相手におどかしたりすかしたりしながら、「投資金」を振り込ませた会社の弁護をするというのも不思議なものだなあ、と思いました。

興味深いお話をありがとうございました。

ねこば様

情報、ありがとうございました。

日本弁護士連合会の弁護士職務基本規程には、以下の条項があります。

・弁護士は、その使命が基本的人権の擁護と社会正義の実現にあることを自覚し、その使命の達成に努める。(第1条)
・弁護士は、詐欺的商取引、暴力その他違法若しくは不正な行為を助長し、又はこれらの行為を利用してはならない。(第14条)
・弁護士は、依頼の目的又は事件処理の方法が明らかに不当な事件を受任してはならない。(第31条)

私は、悪質商法を行っている企業の代理人を引き受ける弁護士は、これらの規程に抵触しているのではないかと考えています。ご存知かも知れませんが、足利事件で冤罪となった菅家さんの弁護をしていた佐藤弁護士も、悪質商法を行っていた企業の弁護をしていました。このような弁護士にとっての社会正義とは何なのでしょうね。

弘中弁護士は、小沢一郎氏の弁護人になりましたね。著名人の弁護を引き受け「辣腕」と言われている弁護士ですが、やはり私は悪質な商法を行っている企業を弁護する弘中弁護士の姿勢には疑問を抱きます。世間の人は人権派と評価しても、私は人権派ではないと思っています。

老後の大切な資金をだまし取られたお母様は、どんなに辛いでしょう。どうか、こんな理不尽なことに負けず、頑張ってください。

人権派というのは第三者が勝手にそう呼んでいるだけで、
依頼人がどういう人かということではなくて、事案を見て、
勝てる可能性があれば引き受けるということなのではないでしょうか。

武富士の弁護をしたからといって、
武富士のやり方を全面的に支持するとかいうことではなくて、
あくまで当該事件に限って裁判に勝てる(主張が法的に正当である)
可能性があると判断するから引き受けるのではないかと思います。

はむ様

記事の中で紹介している三宅勝久さんの書かれた記事を読まれましたか? そこには以下のように書かれています。

〈……権利関係が事実的、法律的根拠を欠くものであり、それを容易に知りえたのに、言論、執筆活動を抑制またはけん制するために被告会社(武富士)が訴訟を提起した行為は、裁判制度の趣旨目的に照らして著しく相当性を欠くものというほかなく、原告らに対する違法な行為として、損害賠償の責を免れない〉

裁判官は提訴自体が相当性を欠き、違法だとしているのです。どう考えても言論封じのためのスラップではありませんか。

はむ様

追伸です。

以下の記事に書いたように、弘中弁護士は自由人権協会に所属しています。真実を報じるジャーナリストに対し口封じ裁判を起こすことは、人権侵害です。人権派を自認しているのに、とても矛盾していると私は思います。

https://onigumo.cocolog-nifty.com/blog/2011/02/post-9968.html

弁護をしているからといってその者の肩を持っているわけではないと私も思います。法人であれ、裁判を受ける権利は日本国民に共通であり、弁護士はそれを実質化するために弁護をするのだと思います。

弘中氏が世論によって悪にされたものを、客観的な目で見直し、依頼を受けることが妥当だと判断された結果だと思います。

どんな人格であれ弁護士に弁護を依頼する権利を持ちます。
そうでなければ、社会的に違法とされただけで誰も、何も弁護できなくなってしまいんす。
また、たとえ違法な団体であっても、ある批判、処分について不当な点があるとすれば、そこは是正する必要があります。

本質はどうなのか、真実はどうなのか
それは裁判で裁判官が決めることであり、その前段階として弁護士が”違法であろう”者を弁護したからといって、それは弁護士職務規定に違反することにはなりません。

そもそも刑事事件では自分の意に沿わない者を弁護しなければならない時もあります。そんな時でも依頼人の利益を第一に考え仕事をするのが弁護士の役割です。

もちろん中にはお金のために間違った仕事の受け方をしている弁護士も大勢います。しかし、弁護士一般に対しこのような批判をされるのは全く不当であり、弁護士という職務に対する理解をあまりに欠いていると思います。

弁護士がいることによって社会が受ける恩恵がどれほど大きいか、もう一度考えてみてください。

souos様

あなたは弁護士かとお見受けしますが、弁護士あるいは法律関係者であるなら所属と名前くらい名乗るべきでしょう。なお、私は弁護士一般を批判していません。

どんな人でも弁護士に弁護を依頼する権利を持ちますが、弁護士には受任しないという選択肢もあります。弘中氏が武富士の商法を客観的な目で見て社会的に問題がないと判断して受任したのなら、その理由を具体的に説明すべきです。

なお、三宅勝久さんの記事がリンク切れになっていたので修正しました。

弁護士というのを間違って認識しておりますね。
公平でなければならないのは裁判官。
弁護士は依頼者の弁護を引き受けたからには依頼者の利するための弁護を行う。これは世界の法曹界では当たり前のことです。
正義の味方じゃないでしょうか?といってしまうと、依頼者の利に反することをすることになり、これでは独裁国家などの不当裁判と同じです。ナチスドイツ時代の裁判官フライスラーという、今でもドイツ法曹界の暗黒と言われる不当法廷の限りを尽くしたとんでもない人物がいましたが、その裁判では被告の弁護人も一緒になって被告に不利な尋問を行うなど、もはやまっとうな裁判などありえないのがまかり通り、多くの政治犯にされた人が弁護も許されず即日死刑執行されました。

弁護士が依頼者の弁護を行うのは当たり前であり、そのことに異を唱えてはいません。お間違いなく。

私が問題だといっているのは弁護士倫理のことであり恫喝訴訟(SLAPP)のことです。恫喝訴訟の目的は、自分たちに不利な意見が公表されることを妨害し、批判者に裁判費用を負わせ精神的に疲弊させることです。裁判の本来の目的から外れた訴訟の悪用であり「訴訟件の濫用」です。

米国ではSLAPPを禁止する法制化が進んでいるのですが、日本の法律では防ぐことができません。だからこそ悪質会社・悪徳弁護士は恫喝訴訟を仕掛けるのです。企業や弁護士の倫理の問題であり、日本の法制度の不備の問題です。これについては以下の烏賀陽さんのサイトをお読みください。

http://ugaya.com/column/090308SLAPP.html
http://ugaya.com/column/070217beginners4.html
http://ugaya.com/column/091009kaisetsu8_HOURITSUNOKEKKAN.html

あなたは日本の法律では違法にならないという理由で、訴訟件を濫用し恫喝訴訟を仕掛ける弁護士の倫理も問題ないというのでしょうか。弱い者いじめに賛成なのですか? 悪質商法を擁護するのですか? 私がこの記事で指摘しているのはそういうことです。

初めまして。「天野ベラのブログ」というブログを書いている者です。

私は無名の老女で専業主婦ですが、私が書いているアクセス数の少ないブログに対して、事前の交渉もなく、相手方訴訟代理人・弘中惇一郎・絵里弁護士ら5名による、何と「総額6千万円」もの超恫喝・金員奪取口封じ訴訟をいきなり提起されました。

現在本人訴訟で応訴中ですが、「罵詈雑言でもかまいません」「辛口コメントの方があなたらしい」などと相手方から容認されていたという直近のやりとりという経緯の一切が隠蔽されたまま、僅か3か月で口頭弁論を終結されそうになり必死で抵抗・阻止しました。

虚偽の主張をする者の背中を強く押して、法廷闘争というリングへと強引に誘い込み、高額を奪取しようとする過激な弁護のあり方は、正義から遠く思えてなりません。

「無言電話をかけた」「イタズラ手紙を出した」などまったく身に覚えのない「冤罪」をも着せられており、憤りを抑えられません。

自由人権協会の弁護士らは、いかなる手段に訴えても依頼人の人権だけを守るものであり、正義の対極にあると実感させられております。

天野さん

ブログ記事での名誉棄損であれば、まずは記事の削除や修正を求めるのが筋ではないかと思います。いきなり6千万円もの賠償請求というのは驚きです。

おっしゃる通りです。

削除が目的ではないと思われますから、「事前の交渉」という穏当かつ紳士・淑女的な働きかけなど当然眼中にありません。

名誉毀損訴訟の名を借りた「超高額金員奪取訴訟」であり「精神的苦痛不在の架空請求訴訟」でもあると思っています。

天野さん

マスコミなどが嘘を報じたのならともかく、個人のブログ記事に高額訴訟を起こすこと自体が普通ではないと思います。

たしかに賠償金目当ての訴訟のように感じられますね。それで辣腕と言われている弘中弁護士に依頼したのでしょうか。原告の方のやり方もどうかと思いますが、弁護士もとても人権派とは思えません。


先日コメントをさせていただきました天野です。
先程CIAについての貴ブログ記事を拝見させていただきました。
現在係争中の民事訴訟の原告の夫君がCIAであるとの情報が
主人のブログに寄せられ、拙ブログにも掲載いたしました。
すると、その記事(下記)だけで「名誉毀損」10万円プラス、
「プライバシー侵害」(在日の女と公開)5万円の計15万円を
「法律事務所ヒロナカ」から請求されております。
他者から寄せられたコメントを採り上げただけで15万円もの請求。
前代未聞の荒唐無稽を絵に描いたような訴訟です。
http://beraamano.cocolog-nifty.com/blog/2012/05/post-cd15.html

天野さん

コメントが名誉棄損になることもあるのですが、もし事実ではないならまず削除要請するべきかと・・・。すぐに損害賠償請求というのは、やはりお金目的のように感じられますね。

弘中惇一郎弁護士を擁護するコメント(はむ、なさ、souos、tomy)が似ていて、だんだん本気になって擁護しているように感じます。
まっくろ。

先日はありがとうございました。

上記「ねこば様」のコメントを紹介させていただきたく、貴URLを拙ブログに貼り付けさせていただいてもよろしいでしょうか。

高齢者にとって老後の資金を奪取されることは切実であり命取りになると考えております。

天野さん

私のブログ記事のリンクはどうぞご自由になさってください。

如何お過ごしでいらっしゃいますか。

老骨に鞭打って徹夜も辞さず書面づくりに励んでおりますが、「ヒロナカ」という立派な包装紙に包まれているだけで、肝心な相手方の商品の中身は吟味・精査されることなくやすやすと信頼されてしまうというのが本件の実態です。

私のブログが原因で、相手側が〇病に罹患した、起業した会社を閉鎖したと超高額の「請求書」を突きつける一方で、都合の悪い「診断書」や「陳述書」には、記録閲覧に制限まで加えるなど権力を盾にやりたい放題です。

よろしければ、下記サイトをご高覧ください。

http://litigationwithnaomiikezawa.jimdo.com/冤罪を着せられています/

天野さんこんにちは。

PC遠隔操作事件では弁護団が片山被告の冤罪を主張していました。主任弁護士の佐藤博史士氏は足利事件で菅家さんを弁護して冤罪を勝ち取ったことで名が知れていますが、ジャーナリストの津田哲也氏は悪徳企業の元顧問弁護士であることを指摘して批判しています。
http://news-tag.cocolog-nifty.com/blog/2009/12/post-3676.html

知名度だけでは弁護士についての判断はできません。

お暑さお見舞い申し上げます。
その後お元気でいらっしゃいますでしょうか。

黒薮哲哉氏が弘中惇一郎氏について記事を書いていらっしゃいますのでご紹介いたします。

http://www.kokusyo.jp/?p=6113

天野さん

私も黒薮さんのその記事を読みました。今後もこの裁判を取材されるとのことですので、注視していきたいと思っています。

多くの人が「弁護士=正義の味方」とか思ってる様なんですが、必ずしもそうじゃ有りませんよ。
単に依頼人の味方、依頼人の利益になる様に仕事をしてるだけに過ぎません。
例えば山口組などのヤクザ組織にも顧問弁護士が就いてたりしますが、正義の味方でしょうか?
悪徳商法の企業やブラック企業にも担当弁護士が居たりしますが、正義の味方でしょうか?

ひろくんさん、コメントありがとうございました。

ご指摘の通りと思います。記事に書いたように、弁護士もさまざまです。
ただし、弁護士にも倫理規定があるのですから、最低限それを守るべきですし、それを守っていたら、スラップ訴訟は起こせないと思います。

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