諫早湾の潮受堤防は直ちに開門を!
諫早湾のことについては、「諫早湾の愚行」にも書きましたが、諫早湾の潮受け堤防の撤去や水門の開門を求めた訴訟の控訴審判決で、原告が勝訴しました。久々に嬉しいニュースです。
自然保護に関わる裁判で勝訴することは、とても困難になっています。しかし、この裁判では一審に続いて二審も原告の勝訴です。ギロチンと言われた潮受堤防と漁獲量の減少の因果関係を認めて5年間の開門を命じたのですから、きわめて適切な判断がなされたといっていいでしょう。この自然を破壊し漁民を苦しめた事業に2度もノーが突き付けられたことは、無駄な公共事業であったという烙印が押されたということです。
ただ、ちょっと気になるのが、「防災機能などの代替工事」との理由で3年間の猶予がついたことです。「本件各排水門を常時開放しても、 防災上やむを得ない場合にこれを閉じることによって、その防災機能を相当程度確保することができる」としているのですから、3年もの猶予期間は長すぎるのでは・・・と思えてなりません。すぐにでも開門すべきです。
国は上告を断念し、一日でも早く開門して干潟が甦ることを願ってやみません。以下に、この裁判を闘ってきた「よみがえれ!有明訴訟弁護団」の声明を紹介します。
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弁護団声明
国は直ちに開門の政治決定を
福岡高裁の判決を受けて
2010年12月6日
よみがえれ!有明訴訟弁護団
本日、福岡高裁は2008年6月27日に佐賀地裁が言い渡した開門判決の控訴審において、国の控訴を棄却して、再び国に開門を命じた。
判決は、次のとおり判断して、国に開門を命じている。
諫早湾及びその近傍場においては、本件潮受堤防の締切りによって、漁業資源の減少に関与する可能性のある要因が複数生じた可能性が高い。
現時点において、本件各排水門を常時開放することによって過大な費用を要することとなるなどの事実は認められない。
開門による有明海漁業被害の救済は、いまや待ったなしである。潮受堤防閉め切りから13年が経過し、累積する漁業被害の中で漁民の生活は逼迫している。多くの漁民が生活苦の中で自殺に追い込まれた。漁業を基盤になりたっていた地域社会も深刻な打撃を受けている。
すでに事業が終了し、干拓地での営農が開始されている状況を踏まえ、私たちは、訴訟の内外で、開門こそが漁業と農業・防災を正しく両立させる方策であることを明らかにしてきた。干拓地農業が成功するためには、毒性のアオコが発生する調整池の汚濁水に代わる農業用水を確保しなければならない。真の防災を実現するためには、干拓事業のためになおざりにされていた排水路や排水機場の増設など、有明海沿岸で一般に採用されている防災対策をきちんと採用することが不可欠である。
わたしたちが提唱する短期開門調査レベルの開門から開始する段階的開門の方法によれば、開門前の環境アセスメントは不要である。短期開門調査レベルの開門はすでに実績があるからである。国は、深刻な漁業被害を救済するため、短期開門レベルの開門を直ちに実施すべきである。そのうえで必要なデータを集め、対策をとりながら次の段階へと開門レベルを上げていき、同時にその間じっくりと本格的な防災対策と農業用水の確保を行うことこそが、安全安心の開門と地元合意の実現に向けた最善の方策である。
開門を公約にかかげた民主党政権が誕生して1年が経過した。農水省が設置した諫早湾干拓事業検討委員会の郡司座長が、本年4月28日に、「有明海の再生への可能性を探るため、また、諫早湾干拓の排水門開門の是非を巡る諍いに終止符を打つため、環境影響評価を行った上で開門調査を行うことが至当と判断する」と報告して半年以上が経過した。
もはや逡巡は許されない。
司法による2度の開門命令を真摯に受け止め、国が、直ちに開門の政治決定を下すことを求めてやまない。
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