とかち・市民「環境交流会」の発表を聞いて
昨日の記事の続きです。
私は30日(土)の午前中の発表を聞いたのですが、その感想です。
まず、ちょっと驚いたのが日本野鳥の会十勝(旧日本野鳥の会十勝支部)の会長による「十勝川ワシクルーズ」という発表です。この発表、ゴムボートを利用して川下りをしながらオオワシやオジロワシなどを観察するという有料ツアーの紹介なのです。ツアーの実施期間や費用、関連イベントなどまで説明して宣伝していました。ちなみに大人一名6800円なのだそうです。川下りなので川で羽を休めていたホオジロガモの群れなどは飛んで逃げてしまいます。河原にいるタンチョウなどにも影響があるのではないでしょうか。このようなツアーの紹介を「環境交流会」の発表として行うことに、呆れてしまいました。
外来種の駆除への取り組みということで、環境省上士幌自然保護官事務所による「然別湖におけるウチダザリガニ防除活動について」という発表がありました。然別湖ではすでに湖の半分以上にウチダザリガニが生息しているとのこと。この勢いでは、全体に広がってしまうのも時間の問題ではないでしょうか。今は、ミヤベイワナの繁殖河川に侵入させないことを目的に、駆除活動をしているとのことでした。今年は、17081個体を捕獲したとのことですが、ここまで増えてしまうと人手による駆除も本当に大変なことになります。
さて、この発表の質問の中で、ウチダザリガニと同じ特定外来生物に指定されているセイヨウオオマルハナバチのことに話が及びました。その際、環境省の自然保護官が、糠平まで入っていると語ったのです(注:会場では「糠平の北」と言っていたので、1日に環境省の事務所に電話で問い合わせたところ、夏に糠平で確認されたとのことでした)。糠平は大雪山国立公園の中ですが、これまでは大雪山国立公園の南東部ではセイヨウオオマルハナバチは確認されていませんでした。ついに入ってしまったということです。
環境省上士幌自然保護官事務所は、これまで士幌町などでセイヨウオオマルハナバチの捕獲活動をしていました。士幌町はトマトのハウス栽培でセイヨウオオマルハナバチを利用していたという経緯があり、セイヨウが定着しているのです。しかし、私はかねてから大雪山国立公園に入ることを防ぐ取り組みが必要だと思っていました。糠平や三股にはルピナスやアラゲハンゴンソウなど、セイヨウオオマルハナバチの蜜源になる外来植物の群落があります。しかしそれらの外来種は野放し状態なのです。こういうところに女王蜂が侵入してしまえば、人手による駆除はまず困難になります。これに関しては、以前、以下のような記事を書いています。
聞くところによると、この記事を読んだ環境省の職員が、捕虫網をもって三股に出かけたとか・・・。しかし、環境省は、国立公園への侵入防止対策を何もしなかったといっても過言ではありません。
ミヤベイワナの繁殖河川にウチダザリガニを侵入させないよう、必死に捕獲作戦をしている一方で、セイヨウオオマルハナバチの対応策は甘かったとしか言いようがありません。一度入ってしまったら、手遅れなんですけどね。今後、環境省は国立公園に侵入したセイヨウオオマルハナバチの問題をどうするつもりなのでしょうか。
最後にもうひとつ、ナキウサギふぁんくらぶの発表を紹介します。ナキウサギふぁんくらぶは、私がこのブログでもしばしば取り上げている美蔓貯水池の導水管工事のことについて発表しました。これは、国営のかんがい事業なのですが、ふぁんくらぶの発表では、とりわけこの事業の必要性自体が問われることを強調していました。「水は不足していないから必要ない」という農家の声を聞いているというのです。私もこの点については、かねてから非常に疑問に思っています。酪農家などは牛の飲み水とか、農薬の希釈のための水が欲しいという話もあるようですが、それらは「かんがい用水」ではありません。とにかく、必要性や費用対効果から問いたださねばならない事業であるのに、開発局はそのような主張に耳を傾けないままナキウサギの生息地での工事を始めてしまいました。
残念ながら、これらの発表を聞いていた方たちの多くは、一般の来場者というより関係者ではないかと感じました。背広姿がとても多かったのですが、主催者の関係者でしょうか。多くの人に聞いてもらうために、主催者はより工夫が必要でしょう。
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