「道警裏金本訴訟」控訴審をめぐって思うこと
道警の裏金問題などを報じた2冊の本に、事実と異なる記述があり名誉毀損であるとして、元道警総務部長の佐々木友善氏が出版社や北海道新聞の記者、北海道新聞社などに600万円の慰謝料を求めた訴訟の控訴審判決が26日にありました。判決は、道新などに72万円の支払いを命じる一審判決を支持し、原告と被告の双方の控訴を棄却するというものでした。
この裁判での判決にはおかしなところがいろいろあるのですが、それを理解していただくために、是非、被告人の一人である道新記者の高田昌幸さんの以下のブログ記事をお読みいただけたらと思います。
以下に、高田さんのブログから一部を引用させていただきます。
話題は代わって2つ目。この裁判では、マスコミ対応を誤った佐々木氏が「上司たる道警本部長に叱責されたかどうか」が争点になっている。われわれの出版物には、叱責されたと記しているが、佐々木氏は「叱責されていない。なのに叱責されたと書かれたことで、自分は能力のない男だと世間に思われた。それは名誉棄損だ」と、まあ、簡単にいえば、そう主張している。
佐々木氏に対する叱責は、当時、道警内で一時、結構話題になった。そして、記者は本部庁舎内の総務部等を巡回取材している中でそうした話を聞いたのだと、そこまでは法廷で明らかにした。
すると、一審の途中で佐々木氏(すでにOB)は当時の総務部等の関係職員全員約40人(=つまりかつての部下)に対し、ヒアリングを行い、「そんな話、叱責のことなど当時聞いたことがない」と言わせたのである。警察は民事不介入だと思っていたし、公務員・官公庁が民間同士の民事訴訟の片方に対し、全面協力するなどとは信じられない話である。通常、こうした回答を道警の一職員が勝手に行うことは有り得ない。すべからく上司・組織の了解を得て行われる、というのが常識である。
私はこの部分を読んで、ある事件を思い出しました。ナキウサギふぁんくらぶのメンバーが大規模林道の予定地のすぐ近くでナキウサギの生息地を見つけました。そのことを事業主体である緑資源機構に伝えると、緑資源機構の職員がナキウサギふぁんくらぶの代表に、その場所を教えて欲しいと請いました。ところが、その場所を教えて少し経ったある日、そのナキウサギ生息地の岩塊の隙間が何者かによって土で埋められてしまうという事件が起こったのです。この場所を知っているのは、ふぁんくらぶのメンバーと緑資源機構の職員くらいしか考えられません。当然、緑資源機構の関係者が穴埋めに関与したのではないかという疑惑が生じます。
穴埋め事件について抗議すると、緑資源機構の職員は部下に聞き取り調査をし、その結果をもとに「自分たちはその穴埋めに関与していない」と主張してきました。
上司が部下に対して行った内部調査の結果など、いったい誰が信用するというのでしょうか。道警はそれと同じことをやって、部下に「叱責のことなど聞いたことがない」と言わせたのです。こういうことを裁判官が何も疑問に思わないとしたら、裁判官の感覚を疑いたくなります。
時事通信の記事によると、「二審判決は『叱責された』などの記述に関し、記者が道警本部長と佐々木氏に直接取材しなかったと指摘。『信じるに足りる取材をしたと認めるのは困難』と判断した」となっています。しかし、裁判所がそんな理由で記事が捏造であったと判断したのなら、あまりにもお粗末です。これでは、ジャーナリストは記事を書くにあたってすべて本人に取材して証言を得なければならないということにもなりかねません。伝聞を報じることもできなくなります。これではジャーナリストは疑惑などを報じられなくなります。
また、高田さんが指摘しているように、この裁判で道新幹部と道警の佐々木氏が裏取引といえる交渉をしていたことが明らかになったのは注目すべきことでしょう。しかも道新の内部情報が道警に漏れていたといいます。権力とマスコミの裏取引や癒着はいたるところであるはずですが、これほど公の場で赤裸々に書かれたのも珍しいのではないでしょうか。といっても、こうした記事がインターネットで公開されていても、どれだけの人が読んでいるのでしょうね。以下のマスコミ市民に掲載されている記事を是非とも読んでいただきたいと思います。実に生々しく裏取引の実態が語られています。
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