福田君の弁護士さん、いくらなんでも暴走ではありませんか?
光市事件のルポ「福田君を殺して何になる」の出版をめぐる裁判については、版元のインシデンツのニュースでときどき報告されていますが、9月10日に掲載された「福田孝行被告が本サイトの記事の削除などを広島地裁へ申し立て」という記事と、9月14日に掲載された「『福田君を殺して何になる』関連訴訟、併合へ」という記事を見てたまげてしまいました。
寺澤さんはインシデンツの7月13日のニュースで、福田君の代理人である安田好弘弁護士らが出した準備書面の福田君の健康問題に関わる記述を引用しました。福田君が胃潰瘍で血便や吐血などの症状があり、それが本の出版や裁判によるストレスに起因しているという部分です。また、7月14日のニュースでは、福田君が行った人権救済の申し立てに関する調査を、広島法務局が4月15日に中止の決定をしていたと報じました。
ところが、これらのニュースが名誉毀損やプライバシー侵害にあたるとして記事の削除と損害賠償100万円の支払いを請求したというのです。原告(福田君)の承諾を得ないでプライバシーに関わる陳述書の内容を公開したことで精神的苦痛を受けたという主張です。
さらに増田美智子さんが「SPA!」と「週刊女性」のインタビューに応えた記事も、名誉毀損やプライバシー侵害だとして、100万円の損害賠償を請求したとのこと。
裁判というのは基本的に公開です。裁判でどのようなことが争われているのかを、当事者である寺澤さんや増田さん、あるいはジャーナリストなどがメディアを通じて知らせることは何の問題もないことです。むしろ、関心を寄せている人のためにも知らせていくべきことでしょう。もちろんプライバシーの侵害などがないように気をつけなければなりません。しかし、胃潰瘍で体調不良だから速やかに差し止めが認められるべきだという原告自身の主張まで、プライバシー侵害だというのはどんなものでしょうか。人権救済の申し立てに関する調査が中止されたという事実を報じたことの、どこが問題なのでしょう? 私には理解不能です。
福田君側が、ここまで次々に削除要請やら損害賠償を求めてくるというのは、一般の人の目には異常というか暴走としか映りません。弁護団の印象を悪くするだけです。こうなると寺澤さんや増田さんに対する嫌がらせのようにしか感じられないのです。あまりにも大人げない行動ではないでしょうか。安田好弘弁護士については、私はかつてこのブログでも好意的に取り上げていたので、今回のことでは本当に落胆しました。「SPA!」や「週刊女性」の記事が名誉毀損やプライバシー侵害であると主張するなら、それらの版元にも損害賠償を求めたのでしょうか?
現在、福田君は親族や弁護士など、ごく一部の人としか面会できません。情報がどこまで正確に伝わっているのかとても気になります。
この福田君の裁判について、興味深い意見を書かれているジャーナリストの古川利明さんの記事を紹介しておきましょう。
三井環(元大阪高検公安部長)氏の「口封じ逮捕事件」に対する上告棄却決定を弾劾する(承前)
なお、古川さんの記事で酒鬼薔薇少年のことが出てきますが、彼はほぼ間違いなく冤罪だと思われます。これについては、改めて書きたいと思います。
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