森林生態系保護地域等設定委員会の意味不明の議事録
北海道森林管理局のホームページに、9月6日に開催された第3回大雪山・日高山脈森林生態系保護地域等設定委員会の議事録が掲載されていました。
当日傍聴された方によると、委員の皆さんには意見募集に寄せられた意見が配布されたそうですので、それに対して委員の方たちがどのような意見を述べたのかと思って読んでみました。ところが、この議事録、なんだか意味がよくわかりません。
1日時、2会場、3出席者まではわかります。4は「主な意見」となっていますので、委員の方たちから出された意見が記されているのかと思ったのですが、「(1)については、報告事項であることから、今後の説明の際の参考とする旨森林管理局より説明」という但し書きがあります。
(1)は「森林生態系保護地域等の設定案等に関する意見募集の実施結果について(報告)」となっています。ならば、森林管理局から委員の方への報告事項なのかと思って読むと、委員の意見としか思えないものなのです。ならば、なぜ(1)が「報告事項」であると但し書きをするのでしょうか? まったくもって意味不明です。
そもそも発言した委員の名前を入れた議事録を作成すれば、こんなわけのわからない議事録にはなりません。発言者の名前を出していれば、「報告」というのが森林管理局からの報告なのか、委員から出された意見なのかは一目瞭然です。
有識者から意見を聞くことを目的に委員会を設置しているのであれば、誰がどのような発言をしているのかということを明らかにすべきなのです。それが委員を引き受けた方の責任でもあるでしょう。この委員会は公開で行われているのですし、発言者の名前を伏せる理由がわかりません。
(1)は委員から出された意見と判断されますが、そうであれば「意見1の標高1,000m以下に重要な森林があるという主張についてはそのとおりだと思う」とか、「森林生態系保護地域と緑の回廊だけの議論では生物多様性を守るためには不十分であると考えており、周辺地域についても検討しながら全体を保護していくといった説明があった方がよい」、あるいは「意見4にある『“保護ゾーン”を拡張すべき』という意見は妥当と思う。森林生態系保護地域及び緑の回廊以外の別の対処でもよいので、カバー率が上がるようお願いしたい」などといった意見が出されていたことになります。
以下のページを読んでみてください。
第3回大雪山・日高山脈森林生態系保護地域等設定委員会の概要について
「開催の結果、設定委員会(辻井達一座長)から、設定案については妥当である旨、また、森林生態系保護地域等の一層の保護を図るため、道有林をはじめとする国有林と隣接する地域とも連携を図っていくことが重要である旨答申をいただき、3回にわたる設定委員会を閉会しました」となっています。拡大すべきだという意見が一般の方からも委員からも出ていたのに、「原案が妥当」という結論になっているのです。いったい何のための意見募集であり、委員会だったのでしょうか? やはり、はじめから林野庁に都合の良い案を通すための委員会であったとしかいいようがありません。あの案なら、林野庁はほぼこれまでどおりの施業(=略奪林業という森林破壊)ができるのですから。
こんな意味不明の議事録を掲載したのは、委員からの意見を案に反映させなかったことを誤魔化すためではないかと思えてなりません。
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