奥日光のシカ食害とクリンソウ
奥日光のミズナラの巨木の記事でも触れましたが、西ノ湖から千手ヶ浜までの林床の様子には驚きました。かつてこのあたりはササに覆われていたらしいのですが、今はササは全くありません。一番目立つ植物はシロヨメナで、林床全体がシロヨメナで覆われているところもあります。このシロヨメナはシカが食べないのだそうです。食害のひどいところでは、ほとんど裸地化しています。あまりにもスカスカな状態で、とても日本の森という雰囲気ではありません。
西ノ湖から千手ヶ浜への遊歩道を歩いていると、黄色い花の群落が見えました。マルバダケブキ(下の写真)です。これもシカが食べないそうです。キオンも咲いていましたが、キオンもシカは食べないのでしょう。
奥日光のシカは冬には標高の低いところに移動するとのことですので、主に夏にササを食べたのでしょうか。北海道でもエゾシカが増えましたが、ササを食べるのは普通は冬です。餌のとぼしい冬に雪を掘ってササを食べたり樹皮を齧ったりしますが、夏にはまずササは食べません。奥日光ではシカの食害が深刻だという話しは聞いていたものの、これほどまでササが消えているとは思いませんでした。
千手ヶ浜のあたりはハルニレが多く、ハルニレの樹皮を好むシカがこのあたりに集まってきたようなのですが、それにしてもこれほど大面積にササがなくなってしまうとはちょっと驚きです。今回は西ノ湖の近くで雄のシカを一頭目撃しましたが、近年はシカの数は減ってきているようです。
ところで、千手ヶ浜といえばクリンソウの群落が広がっていると、8月18日に放映されたNHKの「ちょっと変だぞ 日本の自然 大ピンチふるさと激変スペシャル」で紹介されていました。クリンソウもシカが食べないので広がっているというのです。しかし、その番組に出てきたクリンソウの花を見て驚いてしまいました。白やピンクの濃淡の花は、野生のクリンソウの花の色ではありません。園芸種を誰かが持ち込んだものが、増えてしまったのでしょう。今はすっかり千手ヶ浜のクリンソウが有名になり、観光客が観賞や写真撮影のために大勢訪れるそうですが、国立公園の中に外来種が繁茂しているのであれば駆除すべきです。ところがそういう声はちっとも聞こえてきません。
環境省はエゾシカの食害で苦慮しているようですが、外来種の除去には関心がないのでしょうか? この番組では宮城県石巻市でアサリに壊滅的な被害を与えているサキグロタマツメタという外来種の貝のことも報じていました。同じ外来種なのになぜクリンソウのことは外来種として報じないのか? まったくもって不思議です。もはや観光資源となってしまっているクリンソウを駆除すべきだと報じたら、クレームがくるからでしょうか?
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