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2010/07/31

生きていた幻の鳥ミユビゲラと森林保護

 29日付の毎日新聞にミユビゲラが大雪山で確認されたとの記事が出ていると知人から聞きました。ちょうど「えりもの森裁判」で札幌に出かけたので、駅で毎日新聞を購入すると、「『幻のキツツキ』生息確認」という写真付きの大きな記事が出ていました。

 記事によると、北方森林鳥類調査室と岩手大学農学部保全生物学研究室が2006年に大雪山国立公園でミユビゲラを発見し、国立公園南部で約200ヘクタールの生息域を三カ所確認したとのこと。複数の雄が生息していると推測されるとのことでした。そして掲載された写真のキャプションには、「大雪山国立公園内で07年、北方森林鳥類調査室の稗田一俊さん撮影」とあります。この記事からは、少なくとも06年と07年に確認されていたことが分かります。

 ミユビゲラの記録については、「十勝三股森づくり21」のホームページに9例が掲載されています。近年では1988年に十勝三股で雌一羽が観察されていただけですので、2006年の記録は18年ぶりの発見ということになります。きっと大雪山国立公園のどこかに細々と生きているだろうとは思っていましたが、実際に生きていたということに感慨深いものがあります。あまり物音をたてないキツツキのようですし、個体数はとても少ないはずですから、見つけるのは至難の業といえるのです。

 さて、この記事を読んでとても不思議に思ったことがあります。記事には生息域の大半は国立公園の普通地域であり、林野庁が伐採や下草刈りを続けていて繁殖への影響が懸念されるとしています。そして「今年10月に名古屋市で開催されるCOP10(生物多様性条約第10回締約国会議)を前に、日本の森林生態系の危機を知ってもらうため、公表に踏み切った」と書かれているのです。

 2006年に生息を確認してから繁殖期に伐採や下草刈りをしていたというのであれば、早急に公表して施業の中止を求めるべきだったのではないでしょうか。その間にも天然林の伐採は行われていました。危機的な状況であり早急な保護が必要だというのであれば、速やかな公表と対策こそ意味があります。公表したからといって、調査ができなくなるわけでもないのですから。4年も前から内密に調査をしていながら、今になってCOP10を持ち出して「保護のために公表した」というのは、なんとも不可解です。

 また、記事には東京大学の樋口広芳さんがコメントを寄せており、「分布域や数を把握するため、詳細な調査を期待する」としています。ミユビゲラはエゾマツなどの枯損木を採餌木にしていると考えられますから、採餌木を求めて生息域が変わっていくと思われます。1988年の十勝三股の発見場所には後に私も行きましたが、残念ながら見ることができませんでした。その場所では2回観察されて以降、ミユビゲラは観察されていません。採餌木がなくなってしまえば他の採餌木を求めて移動してしまうのでしょう。分布域や数の把握など、簡単にできるものではありません。生息地の実態をあまりご存知ない識者にしかコメントを求めなかったのもどうかと思います。

 冒頭には「ミユビゲラは42年に北海道中央高地で発見されて以降、9件の目撃情報しかなく・・・」となっています。この9件というのは先の「十勝三股森づくり21」に掲載されている記録が元になっていると思われますが、これらは目撃情報だけではありません。採集(捕獲)が複数含まれているということも指摘しておきたいと思います。

 ミユビゲラについては、「まやかしの国有林保護地域の拡大案」に書いたように、林野庁の度重なる過度の伐採や風倒木の処理によって生息地が破壊されてきたという事情があります。林野庁はミユビゲラを危機的な状況に追いやった責任を痛感すべきでしょう。

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