野生化したルピナスは駆除を!
今日の北海道新聞の「読者の声」に、「ルピナス力強く土手の斜面彩る」という投書が掲載されていました。庭に植えていたルピナスが増えてきたために、毎年少しずつ自宅前の土手に移植し、それが200株にもなった。また、同じ斜面にフランスギクの種も播いて自己満足しているという内容です。
「自宅前の土手」とは道路の法面なのか、それとも川の堤防のようなところなのか分かりませんが、おそらく公共用地ではないかと思われます。そういうところに園芸植物のルピナスを植えたのなら、繁殖力の旺盛なルピナスのことですから種子がこぼれてどんどん増えていくでしょう。フランスギクも然り。これだけ生物多様性の保全が叫ばれるようになった昨今でも、このような感覚の方がいるんですね。外来種の野生化に手を貸しているようなものですが、ご本人はなんら問題意識はないようです。それと同時に、こういう投書をそのまま載せてしまう北海道新聞の感覚もどうかと思います。
この投書を読んで、ある光景を思い出しました。かつて音更川(十勝川の支流)の河川敷にルピナスの群落が出現しました。橋を通る人たちの目を楽しませようと、河川敷にルピナスの種を播いた人がいたのです。その光景を見たときには、さすがにゾッとしました。さらに驚いたのは、ルピナスの群落を保つために草刈りまでしたのです。自然のままにしておくべき河川敷に外来種を持ち込み、そこにあった在来種を刈ってしまうという発想には仰天しました。
その頃は、この光景にまったく疑問を感じない人が多かったようです。そうそう、河川敷にルピナスの種を播いた方は、国道の路肩にも種播きをしました。おそらく、その方には「外来種」「在来種」などという意識はまったくなかったのでしょう。
北海道はこのところ急に夏らしい気候になり、道端や空き地など、あちこちに野生化したルピナスの花が目につくようになりました。ニセアカシアの白い花も満開です。でも、前述した投書からもわかるように、こういう光景に問題意識を持つ人は今でも少数派なのかもしれません。「生物多様性」という言葉を頻繁に聞くようになったのに、多くの人は自分の身の回りの外来種や生物多様性の問題はピンとこないようです。
ルピナスは直根性で深く根を下ろしますので、根こそぎ抜き取ろうとしてもそう簡単に抜けません。野生化してはびこってしまうと、駆除するのはとても大変です。フランスギクなどのキク科植物もおびただしい数の種子をつけて旺盛に繁殖します。法面などに沿ってひとたび国立公園などに入ってしまうと、大変なことになります。綺麗だからといって、園芸植物を人の管理が及ばないところにまで植えるべきではないでしょう。
環境省は、せめて国立公園内の外来種駆除の方針を明確に打ち出し実行に移さないと、この国は生物多様性保全の後進国となってしまいます。大雪山国立公園の十勝三股のルピナスに対しても、毅然とした態度をとって欲しいものです。
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