ダム問題の今後
今日の北海道新聞「月曜考」で、水源開発問題全国連絡会(水源連)共同代表の嶋津暉之さんへのインタビュー記事が掲載されていました。
昨年の政権交代では、民主党の無駄な公共事業の削減の掛け声とともに全国のダムの見直しが行われましたが、八ッ場ダムでは中止に反対する人たちの大きな抵抗にあっています。では、全国のダムの状況はその後どうなっているのでしょうか。嶋津さんは、全国で実施されている143基のダム事業のうち、とりあえず工事がと止まったのは平取ダム、サンルダムを含め6基だけだといいます。止まったといっても凍結状態で、中止が決まったわけではありません。はじめの掛け声はよかったのですが、実際にはダム中止はかなり苦戦しているという状況です。
そして、国土交通省の有識者会議のメンバーというのがこれまた疑問。本気でダムを止めるつもりがあるのなら、こういう人選はしないだろうというメンバーになっています。嶋津さんはこれについて次のように言います。
「有識者会議のめメンバーの中には明らかにダム推進派の人がいます。私たちと同じ立場の人も選ばれるものと思っていたら、誰にも声が掛からなかった。そんな会議で、ダム事業を止める具体的な基準ができるものなのか。見直した結果、やっぱりダムは必要という結論になる可能性もあるのです。自民党政権がつくった計画に民主党政権がお墨付きを与えたら、今度は大手を振ってダムがつくられていく。こうなっては、ダム反対運動にとって暗黒時代です」
そうですね。昨年の政権交代時のあの勢いはどうなっちゃったんでしょうか。有識者会議のメンバーがダム建設にゴーサインを出してしまったら、ダムを推し進めてきた自民党となんら変わりはありません。本当に安心できない状況です。
嶋津さんはこんなことも言っています。
「ダムに頼る治水計画は私に言わせればギャンブルに等しい」「河川改修を進めることで、もっと安上がりで効果的な治水対策は可能です」「節水技術の進歩と人口減少を考えると、今後は水不足ではなく水余りの時代になります」
確かにダムによる治水など危ういギャンブルでしかないでしょう。洪水が頻発する河川の場合は、ダムではなく河川改修などで対応するというのはもっともでしょう。しかし川というのは本来、たまに襲う集中豪雨などによって氾濫するものなのです。氾濫によって肥沃な土壌が運ばれるのです。川は氾濫するのだという認識のもとに、万一氾濫した場合に被害を最小限に抑える対策をたて、洪水とうまくつきあっていくという考え方も必要です。所詮、人間の手で洪水を抑え込もうなどというのは驕りでしかありません。
結局、治水・利水などといっても、国民のためにダムをつくるのではなく、税金で甘い汁を吸いたい人たちのために造るのです。
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