銭函海岸の風力発電計画を考える(その8)
銭函海岸の自然を守る会が、日本風力発電株式会社に以下の要望書を送付しました。クリーンエネルギーを謳って「クリーン」とはかけ離れた横暴なやり方で建設を強行しようとする企業の姿勢が見えてきます。
**********
2010年5月19日
日本風力開発株式会社
代表取締役社長 塚脇 正幸 様
銭函海岸の自然を守る会
代表 後藤 言行
北海道小樽市銭函風力発電事業に係る要求書
この度、貴社が北海道小樽市銭函海岸地域において計画している風力発電施設の建設について、貴社のこれまでの対応の経緯を踏まえて、要求するものです。
風車建設予定地は、全国的に極めて少なくなった自然砂浜海岸であり、札幌・小樽・石狩市民はもとより、北海道各地・全国からその保全を望む声が上がっています。また、北海道や環境省もその貴重性を指摘し、保全の重要性を表明・強調していることは、別添の環境大臣にあてた「北海道小樽市銭函地区の自然海岸を保全するための要望書」(2010年3月22日)に述べているとおりです。
風力発電事業は、建設段階で貴重な自然を破壊するだけではありません。風車の稼働による低周波音・超低周波空気振動のために、深刻な健康被害が発生している事実が全国から報告されています。環境省もようやく全国的な被害の実態を調査するようになりましたが、低周波音・超低周波空気振動の悪影響は、人体のみならず、野生生物をはじめとするすべての生物について明らかにされなければなりません。
銭函海岸の風車建設について、開発等の可否の決定権を有しているのは、小樽市と小樽市民だけではありません。銭函海岸は国民共有の財産であり、企業の営利追求のために破壊してしまうことは到底許されるものではありません。
この貴重な自然を破壊して風力発電施設を建設しようとしている貴社は、その進め方においても数々の無法や道義に背く行為を繰り返してきました。その内容は次の通りです。
◇情報や資料を隠蔽する
・小樽市民が二度にわたって配達証明郵便で要求した「環境影響評価方法書」の提出を拒む。
・2009年3月24日に「住民説明会を実施した」と主張するが、国会議員の議事録開示要求にも「株主の不利益」を理由に開示を拒む。
・提供すると約束した(2009年11月16日)「江差風力発電所の環境影響評価書」を提出しない。
・2009年12月19日に私たちの主催で開いた集会(事業者を追求する集会)で、アセスメントの中間発表をした際の基になった中間資料について、三度にわたる要求を無視して提出しない。
・しかし、小樽市に提出した中間資料には、札幌市営団地に最も近い2基の風車を図面から削除している。この隠蔽は、北海道小樽土木現業所に提出した「ボーリング調査の場所」の図面の情報開示で発覚した。
◇説明会を開かない、真摯な対応がない
・低周波・超低周波空気振動による人体への悪影響が考えられる札幌市、石狩市で説明会を開いていない。
・小樽市においても、補助金が採択されたその日、2009年7月31日の第1回説明会で「これから何回も皆様と話し合いをもち、十分納得していただいてことを進める」と述べたことと裏腹で真摯に対応していない。
一般社団法人新エネルギー導入促進協議会(NEPC)の「公募要領」に記載される「地元調整」は、数名の工業団地経営者の同意でもなければ、小樽市長の見解だけでもありません。私たちは小樽市銭函の貴重な自然海岸を破壊する、貴社の風力発電事業計画に再考を求めるものでありますが、風力発電に理解を示す人々でさえ、銭函自然海岸の保全を考え、この大規模な事業計画に危惧を抱いております。そのような人々に対しても貴社は丁寧な説明を行う義務を負っているものと考えます。
以上のことから、下記の項目について実施されることを要求します。
記
1.NEPCに補助金の申請を行う前に説明会を開くこと。
2.説明会は少なくとも札幌市、石狩市、小樽市で開催すること。
3.当然のことながら参加者の資格は、参加を望むすべての人々とすること。
4.説明会の議事録は公開すること。なお、議事録署名人は、説明会の席上で複数人を選出すること。
5.回答は5月31日までに、文書をもって「銭函海岸の自然を守る会」事務所(小樽市緑3-2-12)あて提出されたいこと。
« 相変わらずの黒塗り公文書 | トップページ | 森林シンポ「森林と生物多様性」のお知らせ »
「環境問題」カテゴリの記事
- 生物多様性の消失と人類の未来(2024.07.26)
- 香害という公害(2024.07.03)
- 人間活動による地球温暖化の何が問題なのか(2023.09.14)
- グレート・リセットと地球温暖化否定論(2023.04.30)
- 小規模流水発電の普及を(2022.08.12)
コメント