実証された風倒木処理の誤り
昨日の北海道新聞に「風倒木残せば“一石二鳥” 北大調査 植生豊か、シカ食害減も」という記事が掲載されていました。要約すると以下のような内容です。
2008年に、北大農学部研究院の森本淳子講師らの研究グループが石狩森林管理署と協力し、2004年の台風18号で風倒被害を受けた支笏湖東側のトドマツ林に「風倒木を残した区域」「重機で地ごしらえした上で再植林した区域」「再植林してさらに下草を刈った区域」「風倒木の枝や根などを積み上げた区域」の4つの試験区域を設定し、植生の変化や食害を調べた。その結果、風倒木を残した区域ではトドマツの幼木が育ち、植物の種類も豊富で生長も早かった。また、エゾシカによる食害も風倒木を残した区域が最も少なかった。
要するに、近年道内各地で行われてきた「風倒木を運び出して皆伐状態にし、重機で地ごしらえをして植林する」という方法は、植生回復やエゾシカの食害などの点で不適切なやり方だったといえます。
大雪山国立公園の幌加やタウシュベツで行われた皆伐による風倒木処理がとんでもない自然破壊を招いたことについては、このブログのカテゴリー「森林問題」で何度も取り上げ、風倒木を運び出して重機で地ごしらえをやる手法を批判してきましたが、この実験でも私たちの主張が裏付けられたということです。当然といえば当然なのですが。
林野庁の職員は、幌加やタウシュベツの皆伐について「適切だった」と繰り返していましたが、この発言は撤回しなければならないでしょう。とりわけ急斜面での重機による地ごしらえは土砂の流出や斜面の崩落などを生じさせており、取り返しのつかない事態になっています。
私が関わっている「えりもの森裁判」の現場(道有林)でも、皆伐地のシカの食害が伐採していないところより顕著であることが分かっています。皆伐して草原状態になってしまうと、そこにシカが集中するために、植えた苗木の新芽が食べられてしまうのです。現地裁判で私がその食害を指摘したところ、道職員が霜害だと主張したのには呆れました。確かに霜害を受けた苗もありましたが、私が指差したのは明らかに食害を受けたものでしたから。林業に携わっている人が食害と霜害の区別もつかないのなら、それはそれで深刻な問題ではないかと思いますが。
林業界では省力化、合理化によって伐採作業、風倒木の処理や地ごしらえなど、大半の作業を重機に頼るようになりましたが、森林を傷つけない手法を考えていく必要がありますし、少なくとも天然林では風倒木は基本的に放置するべきです。林野庁は過ちを認め、しっかりと反省してもらいたいものです。
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