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2009/12/01

美蔓貯水池の欺瞞(8)

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帯広開発建設部の「とんでも説明会」

 「美蔓貯水池の欺瞞(6)」に書いたように、十勝自然保護協会とナキウサギふぁんくらぶが10月9日付けで提出した「美蔓地区国営かんがい排水事業に係わるナキウサギ調査の信憑性および調査員の適正についての質問書」への説明会が、昨日(30日)開かれました。

 まず、始める前にマスコミ取材についてひと悶着。私たちは、多額の税金が使われる公共事業の問題ですからマスコミにも知らせました。ところが、帯広開発建設部は「新聞記者の同席は挨拶の部分だけにして非公開にしてほしい。記者にも了解を得ている」といってきました。しかしそれを聞いた新聞記者は「そのような了解はしていない」と主張。私たちが非公開を求める理由を聞いても明確な説明ができず、記者の同席を拒否することはできませんでした。当然でしょう。

 本来ならこのような説明の場には、責任者である農業開発第1課長が来るのが筋ですが、課長はインフルエンザらしいとのことで欠席。課長補佐と担当者による説明になりました。

 まず、配布された回答文書を読んで目が点になりました。私たちの質問は表題のとおり、開建がコンサルタント会社に委託したナキウサギ調査の信憑性に係わる問題です。ところが、回答には「1 事業の促進について」「2 環境配慮について」と、質問とは全く関係のないことが書かれています。肝心の質問に対しては、最後に以下のように書かれているだけ。

 「なお、質問書にあります『大雪山系低標高域におけるエゾナキウサギによる小規模岩塊地の利用』と題した論文については、研究者の名前で発表されたものであり回答する立場にないことをご理解願います」

 これは質問に対する回答ではありません。こんな回答のために私たちは手弁当で集まっているわけではないのです。そして、開建はスライドを使って工法などの説明を始めました。質問には回答せず、勝手に工事の説明をしているのです。開いた口がふさがらないとはこのことです。ナキウサギふぁんくらぶ代表の市川さんは泊りがけで札幌から来ているのに、これほど市民を愚弄した説明会もないでしょう。

 私たちはこのようなやり方に憤然と抗議するとともに、コンサルタント会社の報告書の矛盾点について見解を求めました。しかし、担当者は最後まで矛盾点を認めず、のらりくらりと意味不明の曖昧な返答に終始しました。コンサルタント会社から説明を受けたかどうかも、答えないのです。50日も待たせておいて、この間いったい何をしていたのでしょうか?

 これではどうしようもないので、こちらからいろいろ質問を突きつけました。

 まず、開建の配布した回答文書です。課長名になっていますが、文書番号もなければ印鑑もありません。これは決裁をとった公文書なのか、情報開示したら出てくるのかなどと聞いたのですが、その回答は「開示請求の対象にはらない文書」とのこと。要するに、課長名の私文書で対応しているということなのです。しかも、この文書には「これまでも貴会との打合せ及び文書でも・・・」という記述があります。私たちは開建の説明を元に矛盾点を指摘して事業の中止を求めているのです。それを「打合せ」というのはどういう感覚なのでしょう。こんな表現を使われたのでは、まるで談合をしているかのようです。これが開発局の自然保護団体への対応です。

 ほかに以下のような質問をしたのですが、当然その場では答えられないので、後日回答するように求めました。

・水を必要としている作物は、具体的に何なのか(開建の説明では、受益地の作物として小麦、甜菜、馬鈴薯、豆類、スイートコーン、野菜、牧草などが挙げられていました)。

・受益者の100パーセントの同意を得ているというが、判を押した農家全戸が実際に水を利用するのか(芽室の美生ダムでは当初の目的がなくなり、家畜の飲み水、農薬の希釈、機械の洗浄などに使っている)。

・開建の調査報告書では、ナキウサギの生息地する岩場の中の湿度が100%以上になっているが、そんなことはあり得ず杜撰な調査だ。確認してほしい。

・調査報告書ではナキウサギの定着個体はいないと結論づけているが、繁殖期である4月から7月にかけて痕跡を確認しているのであり、論理的に矛盾する。

 そして最後に、質問書で要請した報告書の矛盾点についての見解と抜本的な再調査について、部長名の公文書で回答するように強く求めました。

 つくづく感じたのは、彼らは誰にでも理解できる明確な事実を示しても、絶対に矛盾点や非を認めようとはしないこと。意味不明のいい訳をするか、うつむいて黙り込むかだけです。責任者が出ていないのでこうするしかないのかも知れませんが、あまりにもみっともない。こんな醜態をマスコミの前に晒したくないからこそ、自然保護協会とマスコミの双方に非公開を申し入れたのでしょう。こういう実態こそ、公表しなければなりません。それにしても、久々に血圧が上がった(測ってはいませんが、たぶん・・・)説明会でした。(つづく

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