ムダな農業用ダムは中止を!
20日の北海道新聞に「農業用ダム総点検」という記事が掲載されました。農水省が所管する全国約180の農業用ダムについて、年内を目途に検討するとのことです。赤松農水相は「莫大な費用をかけても役割を果たしていないダムが全国にある。財政面の制約があるが、どんな対策がふさわしいのか整理をする」とのこと。
北海道では富良野市の東郷ダムがその典型です。旭川開発建設部が、かんがい目的で1977年に着工し93年に完成したこのダムは、試験湛水で水漏れが発覚。ダム本体の建設費は157億円とのことですが、止水のための補修工事などを含めこれまでに総額約380億円が投じられました。しかし改修にはさらに費用がかかるとされ、今でも使えない状況です。その間に受益農家も660戸から370戸に減少しています。そもそも本当にかんがいのためのダムが必要だったのかという疑問が生じます。
水漏れダムとしては、ほかにも九州の大蘇ダムが問題になっています。こちらは2005年に完成。事業費も当初の130億円から593億円に増加していますから、東郷ダムと同じような経過をたどっています。それにしても、ダムを建設する際には地質の調査も行うはず。なぜできあがってから漏水が発覚するのでしょうか。不可解としかいいようがありません。
東郷ダムなどは以前から水漏れの欠陥ダムとして問題視されていましたが、事業中止にはなりませんでした。ようやくこのような無駄な農業用ダムが見なおしの遡上に乗ったということです。ここまでくるのに、なんと時間のかかったことでしょうか。
十勝地方で建設が進められている美蔓地区国営かんがい排水事業の問題点については「美蔓貯水池の欺瞞」として連載で書いていますが、これも水需要の減少によって当初の「ダム」が「ため池」に変更されました。現行計画では総事業費が330億円で、受益農家は215戸。農家一戸あたりの事業費は何と約1億5300万円にもなります。しかも、農家の受益者負担分は地元自治体が肩代わりすることになっています。収量を上げるために農家一戸あたりにこれだけの税金をかけるのですから、費用対効果などまったく考えていないといえるでしょう。さらに驚いたことに、受益面積の約半分は牧草地であり畑ではありません。これも中止すべき事業です。
以下の記事も参考まで
« 種名を知るということ | トップページ | ゴミ屋敷という社会現象 »
「河川・ダム」カテゴリの記事
- 十勝川水系河川整備計画[変更](原案)への意見書(2023.02.10)
- ダムで壊される戸蔦別川(2022.08.19)
- 集中豪雨による人的被害は防げる(2018.07.11)
- 札内川「礫河原」再生事業を受け売りで正当化する報道への疑問(2015.12.21)
- 異常気象で危険が増大している首都圏(2014.09.17)
コメント
トラックバック
この記事へのトラックバック一覧です: ムダな農業用ダムは中止を!:
» 望まれない農業用ダムの実態(宮崎県)税金の無駄 [【宮崎県 川南町 切原ダム】 尾鈴畑かんブログ 【必要なダム?】]
日本テレビの「リアルタイム」という報道番組で切原ダムに関する内容が放映されまし [続きを読む]
農業用ダム総点検、の件ですが、これも要注意と見ています。
「問題があれば、事業中止」となればいいのですが、「問題があるなら、さらに工事追加・強化」など不可解な事をしかねません。
宮崎県の切原ダムの相当ムダ・無意味なダムなのですが、農家が不要と言っているのに一向に止まりません。
東国原知事も事業を推進し、何がしたいのか理解できません。
ダム事業は公共事業の中でも特に要注意でしょう。
投稿: eletube | 2009/11/29 23:08
eletube様
コメントありがとうございます。十勝の美蔓地区かんがい排水事業は、建前では農家の要望となっていますが、それもかなり怪しいのです。切原ダムは、農家が必要としていないのが明らかなのですね。やはり、国営かんがい排水事業の大半は、事業のための事業なのでしょう。
総点検ということになると、八ッ場ダム同様、利権の絡んでいる人たちは、何としてでも継続させるように動くのでしょうね。見直しは必要性から論じられなければならないと思います。
事業仕分けでは、20パーセント縮減となったようですが、まだまだ削減すべきでしょう。地元の人たちが声をあげることが大切だと思います。
投稿: 松田まゆみ | 2009/11/30 09:34