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2009/11/18

日本から砂浜が消える?

 先日、新聞の切り抜きの整理をしていたら、「125年後に砂浜がなくなる? 年間160ヘクタールが消失」というショッキングなタイトルの記事が出てきました。1995年7月11日付けの北海道新聞です。

 これは建設省(当事)土木研究所海岸研究室の調査による情報なのですが、1978年から92年までの15年間の砂浜の変化面積は、自然浸食が全国で4605ヘクタールに対し、堆積は2200ヘクタールしかないとのこと。その差の2395ヘクタールが消失しているというのです。年間の消失面積は160ヘクタールなので、机上の計算では125年余りで砂浜がなくなってしまうことになります。こうした状況に、調査をした研究室は危機を募らせているとしています。

 海岸浸食の原因としては「特定はできないが、河川や海蝕崖(しょくがい)からの土砂供給の減少や波浪などの影響のほか、近年目立っているのが、大規模構造物の建設や地盤沈下、港湾埋め立てなどの影響」としています。建設省は、離岸提や人口リーフ(水中に没水型の離岸提)などの対策を講じてきたといいます。そういう対策をしても浸食が進んでいることは、このブログで何度も指摘してきました。

 この記事は1995年ですから、国は14年前には自らの調査で浸食の実態も原因も掴んでいたし、危機感を持っていたということです。

 今年の4月4日には「道内海岸 堤防・護岸 8カ所、倒壊の恐れ」という小さい記事がありました。国土交通省などは「波の力を弱める砂浜の浸食が進んだために倒壊の恐れが強い堤防・護岸が全国で25カ所あり、うち道内は登別海岸など都道府県別で最多の八カ所と発表した」とあります。堤防や護岸による浸食対策も限界にきているのです。今後、同様の危険な堤防・護岸がどんどん増えていくでしょう。

 さらに、一昨日の11月16日には「アカウミガメ『絶滅も』」とのタイトルの記事が掲載されていました。米政府の海洋漁業局の報告によると、日本では魚網による混獲死のほか、産卵場所である砂浜の開発や改変が大きな脅威になっていると指摘しているそうです。海浜性の動植物などは、ダムや港湾など、自然の摂理に反する構造物によって絶滅の危機に追い込まれているといえるでしょう。

 ならば浸食を防ぎ砂浜を維持するための有効な対策は、ダムの撤去や改修によって土砂を流下させたり、港湾の縮小・改修をするしかないのではないでしょうか。海岸浸食の重大性を知りながらそれに目を瞑り、ダムを造り続け、港を拡張し続けた国の責任が問われます。

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