北海道の矛盾した説明に唖然
6日は「えりもの森裁判」でした。といっても、今回はラウンド法廷という円卓の法廷で非公開で行われました。この裁判を起こしたことで、問題としている皆伐に関連してつぎつぎと不可解なことがわかってきたのですが、それによって論点が解りにくくなってしまいました。裁判所も論点の整理をしたいということで、裁判官が原告と被告に疑問点を聞くことを目的に円卓での口頭弁論になったのです。論点の整理ですから、裁判官が原告と被告の主張に対して「こういう理解でいいのか」という具合に、具体的に確認の作業をしていくということです。
えりもの森裁判で私たちが主張しているのは、「天然林受光伐」としながら実際には皆伐して植林をし、さらに集材路の造成でナキウサギの生息地を破壊したということです。受光伐とは、森林の一部を伐採することによって、森林の内部にまで光が当たるようにし、稚樹や若木など下層木の生長を促して森林を複層化する伐採方法のことです。すなわち、後継樹の成長を促すことを目的に、単木または群状の抜き伐りをすることです。天然林を皆伐して植林をするという行為は、とうてい受光伐などといえるものではなく、拡大造林そのものです。そして、売買契約をした376本よりはるかに多い木を伐っていました。この過剰な伐採について被告は、植林の邪魔になるので伐ったと主張していますが、植林の支障になっていない木も多数伐られています。この伐採においては、収穫調査から木材の販売、さらに伐採の区画をめぐってさまざまな疑問や疑惑が生じています。私たち原告は、こうした一連の行為が違法だといっているのです。
さて、今回の話しの中で、内心、非常に憤慨したことがあります。というのは、被告である北海道の職員の「玉取り」についての説明です。
収穫木を指定するための調査野帳には、収穫木の376本の木の樹種や胸高直径などのデータが記入されているのですが、376本の収穫木のうち、胸高直径36センチ以上の木の根株にはナンバーテープとピンクのスプレー、34センチ以下の木(これを「玉取り」としている)にはピンクのスプレーで印をつけたことになっています。つまり収穫木にはスプレーがなければならないことになります。しかし、伐採した直後に実際に現場の伐根を確認したところ、ナンバーテープもスプレーもない伐根が複数ありました。すなわち盗伐が疑われるのです。 昨年の秋、裁判所と原告・被告が現地に検証に行きましたが、その際に原告らはナンバーテープもスプレーもないウダイカンバ(ウダイカンバの材は高額)の伐根を指し示しました。この木は植林の邪魔にはなっていません。ですから盗伐が疑われるのです。すると道職員は、「このあたりは直径が小さめな木が多かったので、区画を決めてその中の34センチ以下の木を玉取り扱いにした。だから区画内の木にはスプレーをつけていない」という説明をしたのです。たとえ「玉取り」する区画を決めたとしても、収穫木に印をつけながら調査しなければ、どの木を調査したのかもわからなくなるでしょう。とても不可解な説明です。
ところが、6日の口頭弁論では、現地での説明と異なる説明をしました。つまり、「玉取り」とは胸高直径34センチ以下の収穫木を野帳へ記入する際の様式であり、業者はナンバーテープとスプレーで特定されている376本の収穫木を伐ったという主張です。ならば、スプレーのない伐根はどう説明するのでしょうか? 現場での説明と法廷での説明が明らかに食い違っており、現場での説明は言い逃れとしか思えません。
これでは、いったい何のために現地に行ったのでしょうか。現場での道職員の説明は何だったのでしょうか? 裁判官に対し、こういう矛盾した説明を平然とする道職員には心底呆れるというか、怒りを覚えました。
次回も、ラウンド法廷で論点の整理の続きをすることになっています。
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