美蔓貯水池の欺瞞(2)
前回の記事のつづきです。
虚偽の説明をした帯広開発建設部
帯広開発建設部との2~4回目の話し合いでは、美蔓ダムをペンケニコロ川に選定した理由について、コスト面と自然環境の面からの説明がありました。帯広開発建設部によると、ダムの建設地は6つの河川の環境調査やコストの試算などに基づいて決めたというのです。その6河川とは、十勝川の支流であるペンケナイ川、ペンケニコロ川、パンケニコロ川、ポンニコロ川(パンケニコロ川の支流)、然別川の支流である第5西上幌内川、第6西上幌内川です。これらの流域で環境調査を行い、また建設コスト面から検討してペンケニコロ川が最も適切であるという結論になったという説明でした。
環境調査の説明には、調査を請負ったコンサルタント会社の職員であるI氏も来ました。しかし、不思議なことに6河川で同じ質の環境調査をやっているわけではありません。それに、ペンケニコロ川の流域にはナキウサギが生息しており、導水管の埋設工事はナキウサギの生息地を直撃します。それがわかっているのになぜペンケを選んだのでしょうか? また、クマタカやシマフクロウをはじめとした絶滅危惧種や希少種も生息しています。ペンケニコロ川は生物多様性も高く、開建の示したデータからも決して適切な選択とは考えられない状況でした。この点について追求すると、結局、ペンケニコロ川を選んだ最大の理由は、猛禽類のランクと天然林の割合、そして改変面積という不可解な説明になったのです。猛禽類のデータというのも、各河川を比較するに耐えるようなものではありませんでした。
なぜ、こんな不可解な説明になったのか、あとでわかりました。
実は、美蔓ダムの当初計画というのは1993年(平成5年)に然別川水系の第6西上幌内川に建設するというものだったのです。ところが水需要の減少などによってダムの規模を縮小し、建設場所もペンケニコロ川に変更することになりました。この変更は1998年に明らかにされていました。
開建が環境調査を行ったのは2000年(平成12年)以降です。つまり、環境調査を行ったときにはすでに建設地はペンケニコロに決まっていたわけです。環境調査は6河川から建設河川を選定するために行ったのではなく、ペンケニコロ川につくることを前提として行ったということです。それなのに、開建は私たちに当初計画やペンケニコロへの計画変更については何も説明せず、6河川の環境調査をしてペンケニコロ川を選んだと嘘の説明をしていたのです。だから、環境調査の説明も辻褄が合わなかったということです。
私たちは、以前の新聞報道を入手してこの事実を知ったのですが、これを知ったときには愕然としました。開建は説明会の要請を拒否しませんでしたし、誠実に対応する素振りを見せてはいましたが、建設地選定に関しては虚偽の説明をしていたのです。当初計画や計画変更についても意図的に隠していたとしか思えません。(つづく)
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