根拠不明の治水対策で1600億円
一週間ほど前のことになりますが、8日に音更町で十勝川水系河川整備計画(原案)の説明会があったので参加しました。この原案は北海道開発局帯広開発建設部が、今後30年間の河川整備計画についてまとめたもので、原案縦覧・説明会、意見募集、公聴会を経て計画を策定することになっています。
参加者には100ページの説明と29ページの附図からなる分厚い資料が配布されました。これはインターネットでも公開されていますが、全部読んで理解するのはなかなか大変な資料です。その分厚い資料の説明がスライドを用いて45分ほどで行われたのですから、もちろん駆け足で概要の説明をすることしかできません。
ところで、河川の整備計画といっても、その中身は治水が中心です。十勝川水系の場合、新たにダムを造るのではなく、堤防の整備や河道の掘削で対応するというわけです。9月10日の北海道新聞によると、堤防整備に約230億円、河道の掘削に約860億円、堤防の保護対策に150億円、その他(広域防災対策や耐震対策など)に約360億円で、合計約1600億円が見込まれているそうです。
十勝川では、洪水のときに速やかに水を流すという目的で、千代田新水路が平成19年に完成したほか、現在同様の水路を相生中島地区に建設しています。相生中島の水路については、十勝自然保護協会は帯広開建に「現在の流路でどれほどの降雨量があると洪水を起こすのか、そしてそれはどれほどの確率か」ということを質問したのですが、これについて数値を示して説明することはありませんでした(「十勝川水路工事で再質問書を送付」参照)。直線化が必要であるという根拠も示さないまま直線化の工事をし、これらの工事が終わったあともまだ洪水時に十分な流量が確保できないところがあるとして、堤防の整備や河道の掘削などに1600億円もの税金をつぎ込むというのです。
十勝川水系では昭和56年に数百年に一度といわれる大雨が降ったのですが、このときの帯広地点での流量は4952立方メートルです。これだけの水が流下しても堤防から水が溢れることはありませんでした。今回の原案では、帯広地点での河道への分配流量は4300立方メートルとしています。過去に4952立方メートルの水が流れているのですから、4300立方メートルの流量はすでに確保できています。ところが、今回の原案では帯広地点でさらに掘削工事が必要だとしているのです。説明が破綻しているとしか思えません。
説明の後の質問時間にも、治水対策の根拠となるピーク流量の設定についての質問が出されました。ところが、帯広開建は具体的な数値を示すことができず、曖昧な回答に終始しました。
帯広開建の意味不明なやり方でいくなら、永遠に堤防のかさ上げや掘削工事を続けることができるのではないでしょうか。これでは治水のための整備ではなく、工事のための整備です。治水の根拠となる数値を具体的に説明できない限り、整備計画原案を認めることにはならないでしょう。
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