無惨な「カミポットくん」植樹地
昨日の記事「カミネッコンへの疑問」の続きです。
2002年のことです。上川町の浮島湿原に出かけたのですが、湿原への歩道の脇に踏みあと道があるのに気づきました。入ってみると林野庁の「パブリックの森」という看板があり、標識には「カミポットくん植樹」「北の森21運動緑の募金 記念植樹」と書かれていますので、募金を利用した植樹地のようです。「カミポットくん」というのは、「カミネッコン」と同じダンボールでつくった紙ポットです。このあたりは過去の伐採のためか樹木がなくてチシマザサが生い茂っているのですが、その一部を掻き起こして紙ポット苗による植樹をしたのです。標識によると2000年に植樹をしたようです。
植樹地を見渡すとアカエゾマツとミズナラが植えられた紙ポットが三つ一組で置かれているのですが、かなりの苗が枯れていました。数えてみるとアカエゾマツは33本中24本、ミズナラは35本中8本が枯死しています。それに、枯死はしていないものの、死にかけているミズナラが8本。両種合わせた死亡率は48.5パーセントですから、たった2年で苗のおよそ半分が枯れてしまったのです。こんなに枯れてしまったというのは、やはり地面に紙ポットを置くという手法に問題がありそうです。この方法では根が地上に露出しやすくなりますし、開けた場所で地上に置かれただけのポットは乾燥しやすいでしょう。

5年後の2007年に同じところに行くと、植樹地の大半はダケカンバの幼木が茂っていました。周囲の森林から飛来した種子が一斉に発芽したのです。ダケカンバに覆われていないところがわずかにありましたが、生き残っている苗の大半は元気がありません。写真はかろうじてアカエゾマツとミズナラの両方が生き残っている寄せ植えです。
それから2年たった先日、同じところに行ってみると、ダケカンバはさらに生長して植樹地を覆っていました。ダケカンバに覆われていないところも写真のような状況です。生き残っている苗も生長の良いものはほとんどなく、なんとか生きているという状況でした。写真のミズナラの苗は、たぶん枯れてしまうでしょう。
林野庁は紙ポット植樹によってアカエゾマツとミズナラの混交林をつくろうとしたと思われますが、多くの苗が枯死するか衰弱し、ダケカンバが生い茂ってしまったというわけです。アカエゾマツは条件の悪いところでも我慢強く耐えることができる樹種ですので、わずかに生き残ったアカエゾマツはダケカンバの下でも生きていけるかもしれませんが、長寿のダケカンバの下では旺盛な生育は望めそうにありません。ミズナラは、すでに息絶え絶えの状況ですから、生き残ることは困難でしょう。ダケカンバ林にするなら掻き起こしだけで十分であり、植樹をした意味はほとんどありません。
もうひとつの問題は、苗木の樹種です。浮島湿原の周辺はアカエゾマツが主体ですが、この植樹が行われたあたりはエゾマツが優占する森林です。また、ここにはミズナラはほとんど生育していません。つまり、元の森林を復元することを視野に入れた植樹ではないということです。植えた苗は、どこで採った種子を用いたものなのかも不明です。エゾマツの苗木はほとんど出回っていませんから、ここにエゾマツの森を復元するのなら、周辺の森から幼木を移植するしかないでしょう。幼木を植えてもそのまま放置したのではササに覆われて枯れてしまいますから、ササ刈りなどの手入れも欠かせません。
これは紙ポット植樹の一例ですが、「カミネッコン」「カミポットくん」の問題点が浮き彫りになった事例ではないでしょうか。植樹のための募金活動があちこちで行われているようですが、こんな状態では何のために植樹をしたのかわかりません。せっかくの募金がこのような無惨な結果にならないよう、植樹方法を改善してもらいたいものです。
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