空を飛ぶクモ
先日、東大雪湖(十勝ダム)に架かる橋を渡ったときのことです。ちょうど橋の改修工事をしていたのですが、足場のポールや橋の鉄骨からクモの糸が何本も棚引いてキラキラと光っている光景に出会いました。写真では見づらいのですが、白いポールから右上に斜めに光っている線がクモの糸です。おそらくこの橋のどこかに卵が産み付けられ、そこから孵化した子グモたちが飛立つ場所を求め、鉄骨を上に上にと登り詰めていって次々に飛立ったのでしょう。鉄骨に掴まってお尻を上にむけて糸を流し、その糸の引く力に耐えられなくなると一瞬のうちに大空に向かって飛立つのです。このようなクモの飛行をバルーニングと呼んでいます。
秋の草原などで、逆光を受けて草の上に何本もの糸がきらめいている光景を見かけることがありますが、穏やかな日に子グモたちが飛立った痕跡なのです。この糸が絡まりあって空をふわりふわりと飛んでいく現象は「雪迎え」とか、「ゴッサマー」「遊糸」などと呼ばれています。こんなバルーニングの痕跡を見るたびに、クモというのは糸とともに生き、進化してきた生物なのだということを思い知らされます。
バルーニングについては「『雪迎え』と『雪虫』」にも書きましたが、こんなふうに風まかせで大空に旅立っていく小さなクモたちはなんと大胆なことでしょう。橋の下にはダム湖が広がっています。うまく上昇気流に乗れずに落ちてしまったら、水の上・・・。たとえ上昇気流に乗って遠くまで飛んでいけたとしても、落ちたところがそのクモにとって好適なところとは限りません。むしろ、好適な環境の場所に落ちることができたなら、よほど運がいいといえましょう。まさに命がけの冒険旅行です。
澄み切った空が広がる穏やかな秋の日、気をつけていれば小さなクモの旅立ちに出会えるかもしれません。クモが飛立つところを見られなくても、幾本ものきらめく糸が子グモの旅立ちを教えてくれます。
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