トムラウシに避難小屋は必要か?
北海道新聞の報道によると、7月にトムラウシ山でツアー客ら9人が亡くなった遭難事故を受けて、新得町が避難小屋とトイレをトムラウシ山頂から新得側登山口の間に設置するよう環境省に要望したそうです。
この遭難事故では、荒天の中を出発したガイドの判断の甘さや、予備日のないスケジュールが指摘されていました。この事故を取材した新聞記者と話しをする機会があったのですが、それによると夏用の登山シャツしか着ていなかった人、簡易な雨具しか持っていなかった人、小さなザックしか背負っていなかった人もいたそうです。また、ツアー会社の職員が避難小屋に客のマットを敷いて場所取りをしていたという報道もあり、ツアー会社のマナーも問題になりました。
たとえトムラウシ山に避難小屋があったとしても、トムラウシ山の手前で最初に動けなくなった方を救うことはできなかったでしょう。この遭難は、悪天候の中を出発したガイドの判断や、客の装備に大きな問題があったといえます。中高年を対象にしたツアー登山の実態が明るみになり、さまざまな問題点を投げかけたのです。
原因を究明して遭難防止の対策を講じなければ、同じような事故はまた起こるのではないでしょうか。安易な避難小屋建設は、「小屋があるから天気が悪くなっても安心・・・」と考える軽装での登山者を増やしたり、ツアー登山を助長することにもなりかねません。
以前であれば、登山者は自分の経験や力量に合わせて登る山やコースを選択し、自らの責任で登山をしました。避難小屋がないなら、それを前提に登山計画を立てて行動すべきなのです。ツアー登山の増加によって、かつての山の常識がどんどん崩れてしまったように思います。
« コンクリートで固める治水事業への疑問 | トップページ | 人としての輝き »
「自然・文化」カテゴリの記事
- いくつになっても変わらないこと(2023.11.26)
- 晩夏の浮島湿原(2018.08.22)
- 「お盆休み」をなくして融通性のある「夏休み」に(2018.08.13)
- 原野の水仙(2017.05.11)
- 石城謙吉さんの環境問題講演集「自然は誰のものか」(2017.01.29)
コメント