中止を明確にすべき八ッ場ダム
国土交通省は、八ッ場(やんば)ダム(群馬県)の本体工事の入札を延期したとのことです。民主党はマニフェストで八ッ場ダムの建設中止を掲げていましたから、民主党が圧勝した今、入札延期は当然のことでしょう。
八ッ場ダムというのは1852年に利根川水系の吾妻川に計画された多目的ダムです。半世紀以上も前に計画されていて総事業費4600億円のうちすでに3210億円が投入され、本体工事以外の周辺工事が進められてきました。
ところが、地元では今さら中止されても困るといった声があるそうです。また、以下の記事によると、自治体の撤退以外の理由で中止された場合、利水費は特定多目的ダム法で建設負担金を全額返還するとの規定があるそうです。このために、事業を継続した場合より、多くの費用がかかる可能性もあるとのこと。
こんな状況になってしまったのは、激しい反対運動があるにも関わらず、事業を凍結して検討しようとしなかったからです。とてもおかしなことなのですが、日本では建設差し止めの住民訴訟が起こされていても工事を凍結させることはできません。反対の声とは関係なく計画が押し進められ、工事はどんどん進んでいくのです。「中止になる可能性がある」などということははじめから考えようとしないのですね。利権構造によって、工事をすること自体が目的となっているのです。
そもそもダムは無駄な公共事業の典型であり、問題が多すぎるから中止が求められているのです。周辺工事が進んでしまったとか、中止したら建設負担金を返還しなければならないなどということに左右されるべきではありません。反対の声が大きいのに周辺工事を進めてしまったことこそ問題であり反省すべきことでしょう。いったい誰がダムを欲しがっているのか、ダムがいかに大きな問題を抱えているのか、そして本当にダムが必要なのか、中止に困惑する人々はダムの本質的問題点をいまいちど見つめなおしてほしいと思います。
八ッ場ダムの問題点については「八ッ場あしたの会」のサイトが参考になります。
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