恐るべき松枯れ対策
先日のクローズアップ現代で、松枯れ問題を扱っていました。松枯れとは、マツノマダラカミキリがマツノザイセンチュウという線虫を媒介することで、松が枯れてしまう現象です。北海道にはマツノザイセンチュウは入っていませんのでどのような防除が行なわれているのかよく知らなかったのですが、今でも殺虫剤の空中散布が行なわれていて、通行人などが目のかゆみや痛みを訴える事例があるとのこと。こんな恐ろしい方法を今でも続けているとは・・・。もっとも北海道では、効果があると思えない殺鼠剤の空中散布を今でもやっているようで、これも恐るべきことです。
番組では人への健康被害のことしか問題にしていませんでしたが、これはあまりにも片手落ち。自然界に毒を撒いたなら、生態系全体に大きな影響を与えるのは当たり前のことなのに、なぜ人への影響しか取り上げないのでしょうか。また、空中散布以外の方法として樹幹に薬剤を注入する方法も紹介されていましたが、これも化学薬品を利用することに変わりありません。その費用は何と1本一万円なのだそうです! かつてレイチェル・カーソンが「沈黙の春」で警告したことが、環境を重視する現代にあって、どうしてこれほど軽んじられるのでしょう。農薬会社に気を遣っているNHKの姿が垣間見えます。
そもそも本州のアカマツは尾根などの痩せ地に生育する樹木です。松林が今のように多くなってしまったのは、もともとあった森林を伐採して環境を改変し、人がマツを植えて薪などに利用してきたからなのです。海岸のクロマツ林も防砂林として人が植えて育てたものが大半でしょう。もともと広範囲に純林をつくらない樹種を人が植えることで、不自然な林を増やしてきたのです。さまざまな樹種からなる森林より、人がつくりだした単一樹種による森林の方が、病害虫は広がりやすくなるのです。そのようなマツ林で松枯れが広がるのは当然でしょう。
マツノザイセンチュウはアメリカからの移入種であり、日本のマツは線虫に対する抵抗性を持っていないために被害が広がるのですが、だからといって殺虫剤を散布したところで、マツノマダラカミキリを全滅させることなどできません。環境汚染を引き起こすだけです。薬剤で何とかしようというのではなく、マツ林のあり方を見直していくべきではないでしょうか。殺虫剤を空中散布するなどということは即刻やめるべきです。
« 文芸社のネット検索をめぐる不思議な現象 | トップページ | 裏金と冤罪のカラクリ »
「森林問題」カテゴリの記事
- 石狩川源流部の国有林違法伐採プレスリリースの考察(2011.10.17)
- 大雪山国立公園の石狩川源流部で驚くべき過剰伐採(2011.08.24)
- 越境伐採を隠ぺいした北海道森林管理局(2010.11.14)
- 石狩川源流部違法伐採合同調査での林野庁のおかしな説明(2010.10.18)
- 名前ばかりの「受光伐」(2010.09.26)
コメント