樹木の炭素固定量
地球温暖化問題に関連して、カーボンオフセットという言葉をよく耳にするようになりました。カーボンオフセットとは、人間活動によって発生する二酸化炭素などの温室効果ガスを、植樹や森林の保護などによって相殺しようという考え方です。地球温暖化の防止のためには化石燃料の使用料を減らす努力をすることが求められますが、すぐに化石燃料の使用をゼロにすることはできません。そこで、樹木による炭素の固定を利用して大気中の二酸化炭素の絶対量を削減しようというわけです。
それでは樹木はどれだけの炭素を固定できるのでしょうか? 先日「十勝三股森づくり21」の会長である斎藤新一郎氏から、生きている樹木の炭素固定量の簡単な求め方を教えていただきました。求め方はとっても簡単で、樹木の材積(幹の体積)の約四分の一なのだそうです。幹の形態によって誤差が出るとはいうものの、その誤差もふつうは10~15パーセントとのことです。例えば、材積が1立方メートルの樹が固定している炭素の量はおよそ四分の一トン、つまり250キログラムになります。
現在知られている世界の超高木に、樹高が83.8メートル、胸高直径が1,110センチメートル、材積が4,055立方メートル(世界一)のセコイアデンドロンがあります。この樹の場合、一本でおよそ1,000トンの炭素を固定していることになります。また、樹高が111.4メートル(世界一)、胸高直径が670センチメートル、材積1,964立方メートルのセコイアの炭素固定量はおよそ500トンになります。巨木は一本で多くの炭素を固定することができるのです。
なお、樹木が固定するのは固体の炭素であって、気体の二酸化炭素ではありません。固体の炭素1トンは気体の二酸化炭素3.7トンと計算されているそうです。
材積の大きな樹木ほど多くの炭素を固定するのですから、森林が多くの炭素を固定するためには森林全体の蓄積量(1ヘクタール当たりの樹木の材積の合計)を大きくする必要があります。蓄積量の多い森林というのは、細い木がたくさんあるような森林ではなく、大径木がある森林なのです。かつての原生林には胸高直径が1メートル近い樹や1メートル以上ある樹も珍しくはありませんでした。
ところが、林野庁は「老齢過熟木を伐って若木を育てる」との名目で天然林を択伐し、大きな樹をどんどん伐っていったのです。そうやってお金になる大径木から順に短い周期で伐りだしたために、北海道の天然林の蓄積量は大きく低下してしまいました。大雪山国立公園などの森林の多くでは、かつての半分程度になってしまったといわれています。
天然林は細い樹ばかりの森林になり、森から大径木は激減しました。最近では大径木が減少してきたために、胸高直径30センチ程度の樹まで伐っています。林野庁のやっている伐採は、森林の炭素固定量を減らすことであり、カーボンオフセットに逆行する行為なのです。森林の炭素固定量を増やすには、伐採量が成長量を下回るようにしなければならないということです。
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