過剰な登山道整備では?
4日に道東の西別岳、5日に標津岳に登ってきました。西別岳は登山口に立派な山小屋があり、登山道も整備されていました。登山道沿いのササ原は広く刈られ、道のところどころに排水のための溝が切ってあります。そして、途中から石を並べて階段状にしたところが何箇所も出てきます。おそらく登山道の浸食防止のために足場として並べたのでしょう。ところがその石はどう見てもこのあたりにある岩石ではありません。いったいこんな重い石を誰がどこから持ってきて整備したのか・・・。とても不思議な思いにかられながら歩いていました。
稜線の登山道脇には立ち入り防止のロープが取り付けられ、部分的に木道まであります。さらに驚いたのは、稜線に点在する裸地に刈り取ったササの茎や枯枝が敷かれている光景でした。この裸地は人が踏み入れてできた裸地ではなく、風食によって自然にできた裸地のようでした。これも浸食防止を目的としているのでしょうか? 風食の裸地はこの稜線が森林へ移行するのを妨げる要因になっている可能性があります。自然現象で裸地になっているところを人為で変えようというのは、自然の摂理に反します。
徹底した整備に驚きながら登山口にたどり着いて目に入ったのが、登山道の整備に使っていた岩塊の堆積場でした。発注者は環境省です。そういえば、ここは阿寒国立公園ですから、環境省が登山道整備に関わっているのです。環境省の名を見て、大雪山の愛山溪で行なっている登山道の石組みによる整備を思い出しました。愛山溪では沢地の登山道の浸食防止を目的に、登山者が石づたいに歩きやすいように、意図的に石を階段状に組んでいるのです。この手法はその場所にある石を利用しているのであり、他の場所から石を運んでいるわけではありません。
利用者の増加による登山道の浸食は場所によっては深刻な事態になっていますので、対策をすること自体に異議はありませんが、他の地域の石をもってくるようなやり方は問題でしょう。どうしても整備が必要なのであれば、従来の木材を使った整備の方が適切ではないでしょうか。また過剰ともいえる整備をすることで登山者を誘引するのもどうかと思います。その地域の自然を守るためには、過剰な整備を慎むべきでしょう。
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