治水の根拠をはぐらかす開発局
十勝川の相生中島地区の水路掘削問題と然別川の河畔林伐採について、十勝自然保護協会が北海道開発局帯広開発建設部に質問書を送付したのですが、先日その回答がありました。水路掘削問題ではほとんどの項目ではぐらかした回答をし、河畔林伐採では具体性に欠け、あまりにもお粗末です。
水路掘削は帯広周辺を洪水の被害から守るという治水目的の工事だというのですから、危険となる降雨量やそのような大雨の降る確率、そして水路掘削による効果などについて具体的な数値を出したうえで事業が計画されているはずです。ところが、なんら具体的な数値は示されませんでした。なぜ隠すのでしょうか?
本来なら住民参加のワークショップの最初の説明で、治水工事の根拠となる具体的数値をきちんと示さなければならないはずですが、おそらくそのような説明もしなかったのでしょう。これでは過大な基本高水流量を設定しているのではないかと疑わざるをえません。
河畔林伐採の目的も治水とのことです。河畔林を伐採することで流速を早め、少しでも早く流したいということなのでしょう。相生中島地区の水路掘削と基本的に同じです。しかし、水を早く流すという治水の考え方はとっくに破綻しているはずですが・・・。釧路川や標津川では自然再生を標榜して蛇行復元を提唱していますが(これらも自然再生の名を借りた、工事のための事業だとの批判がありますが)、蛇行復元というのは流速を落とすことにほかなりません。十勝川ではそれと正反対のことを、自然を破壊してやっているのです。開発局のやることは一貫性がなく、矛盾だらけです。
治水工事が必要だとする具体的根拠も示さないまま、工事に同意している「十勝川相生中島地区市民協働会議」への説明会に参加して意見を言って欲しいというのも驚きです。十勝自然保護協会だけを相手に話し合いを持ち、具体的なことを深く追及されるのが困るのでしょうか?
河畔林伐採の回答で、帯広開建は管内の環境団体などに毎年治水事業説明会を開いていることがわかりました。ところが説明会の参加団体は教えられないそうです。行政が市民参加のもとに自ら選定した環境団体の名称が、個人情報につながるという回答には仰天です。こんな馬鹿げた回答は前代未聞ではないでしょうか。
本質的なことを問われたら、こんないい加減な回答しかできないという実態が明らかになりました。これでは市民参加も建前でしかないでしょう。開発局は、いつまでたっても進歩しないようです。
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