えりもの森の皆伐は疑惑のデパート
19日は「えりもの森裁判」の口頭弁論でした。前回は4月17日だったのですが、ブログ非公開事件のために報告していませんでしたので、今回まとめて報告します。
4月の原告の準備書面では「請求の変更」と「ナキウサギ生息地の破壊」について論じましたが、今回、それに対して被告からの反論がありました。前回と今回の口頭弁論での論点は、「越境伐採問題」と「請求の変更」についてです。
越境伐採については「越境伐採疑惑と林班図」と「越境伐採の隠蔽工作?」に書きましたので、詳細はそちらを参照してください。原告は、林班図の区画を超えて伐採していることを越境伐採であり違法行為だと指摘しているのですが、被告はこれに対し「平成13年の時点で基本図が変わっていた」と反論しました。林班の基本図が変更されて区画の線引きが変わっていたという、驚くべき主張です。
森林の区画(林班や小班)は森林管理の基本となるもので、森林の戸籍ともいえる森林簿も小班ごとに記載されています。したがって、特別な事情がない限り簡単に変更するようなものではありません。区画を変更したなら、森林簿に記載された小班の面積や蓄積量も書き換えなければならないはずです。いったいどんな理由があって、そんな面倒な変更をしなければならないのでしょうか? 皆目見当がつきません。私には、困り果てた末の言い訳としか思えません。
さて、この「えりもの森裁判」は、たまたまえりもの道有林に調査に入っていた自然保護団体のメンバーが、天然林の皆伐と作業道によるナキウサギの生息地の破壊を発見し、それが違法であるとして住民監査請求をしたことがはじまりです。監査請求が不受理とされたために住民訴訟を起こしたのです。このときの請求では、「日高支庁長が、契約を締結した支庁長個人に損害賠償の請求をせよ」としていました。ところが、その後の原告らの調査や裁判の中で、次々と問題の詳細が明らかになってきたのです(それらについては、このブログのカテゴリー「えりもの森裁判」で報告しています)。たまたま見つけた伐採について深く追求していったら、伐採と植林がセットとなった、まるで疑惑のデパートともいえる道有林施業の実態が見えてきたのです。
そこで原告らは、法律構成をより具体的にするために4月に「訴えの変更」をしました。当初は「契約及びその履行」に違法があったと主張していたのですが、日高森づくりセンターのセンター長への監督義務違反や履行全体(一面を伐採したこと)に対する損害賠償など、請求内容をより具体的にしたのです。ところが、被告はこの変更を認めないと主張しました。
原告としては、違法な事実には変わりがないので、被告が変更を認めないことに正当な理由はないと考えています。被告は裁判によって次々と明らかになってきた疑惑、すなわち原告らの詳細な請求内容に反論できないために、請求の変更を認めたくないのでしょう。今回の被告の主張に対し、次回に原告が反論します。その後は、被告である北海道がこれまでの原告の主張に対して反論し、双方の主張が出揃った段階で立証に入ることになります。
2005年の末に提訴したこの裁判も3年半が経過し、違法性の主張はほぼ終わって最後の段階に入ります。これまで道有林でどのような施行が行なわれていたかは、一般の人に知られることがなくベールに包まれていました。裁判でその実態に切り込んだことで「疑惑のデパート」が次第に明るみになってきたのです。そのような意味で、原告としては画期的な裁判だと思っているのですが・・・。
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