開発局の過大な基本高水流量
北海道新聞の夕刊の連載「私のなかの歴史」で、北大大学院教授の小野有五氏が取り上げられています。この6月5日付けの記事で、千歳川放水路の根拠とされた「基本高水(たかみず)流量」が過大に算出されていたことが語られています。
基本高水流量とは、ある降雨量において川にどのくらいの水が流出するかを算出したものです(ダムや遊水地など、洪水を調整する施設がない場合の流量を「基本高水流量」それらの施設によって洪水が調整された場合の流量を「計画高水流量」といいます)。
千歳川放水路で、どうやって「過大な数値」を出したのかが上述の新聞記事でわかりやすく説明されています。千歳川放水路計画では、3日間の降雨量を260ミリと想定していました。これは史上最大といわれる1981年の3日間で282ミリより少ない雨量です。ところが、基本高水流量は毎秒18000立方メートルと、1981年の12000立方メートルの1.5倍もの数値になっていたのです。なぜ少ない雨量でありながらこのような過大な数値になったかといえば、短時間に猛烈な雨が集中的に降った1975年の降り方のモデルに、3日分の想定雨量をはめ込んで、一気に大量の水が出るパターンを作り出していたということなのです。
基本高水流量の過大な算出は、もちろん千歳川放水路に限ったことではありません。たとえば、サンルダムの計画されている天塩川では、3日間で233ミリの大雨が降ったときの流量は毎秒4400立方メートルでしたが、予測では3日間で224ミリの大雨で毎秒6400立方メートルの水が流れるという計算になっています。当別川では、3日間で270ミリの大雨が降ったときの流量は毎秒720立方メートルでしたが、予測では3日間で230ミリの大雨で、1350立方メートルの水が流れるという計算になっているのです(2009年3月14日の札幌弁護士会主催によるシンポジウム「川は流れる」の資料より)。開発局の予測は、実績の約1.5倍もの数値になっているのです。
要するに、現実的とはいえない数値を基本高水流量とし、それを基準に治水計画をつくるというのが国の手法です。数字操作ともいえる過大な流量予測によって、必要のない公共事業をつくりだしているといえましょう。これについては、ダム問題に取り組んでいるジャーナリストのまさのあつこさんのサイトでも指摘されています。
十勝川の相生中島地区でも、治水対策のもとに巨額の税金を投入して水路の掘削(ショートカット)が行なわれようとしていますが、この事業も過大に算出された高水流量をもとに計画されたのではないかという疑いを私は抱いています。なぜなら、1981年の未曾有の大雨でも帯広市は洪水被害に見舞われなかったのですから。
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