風食と海岸浸食
これまでの調査から、イソコモリグモの生息できる砂浜の条件として海岸の地形も関係していると考えられたので、道北のイソコモリグモ調査では海岸の地形に着目していました。
この写真は、日本海側のノシャップ岬の付け根あたりで見かけた風食地形です。まるでショベラーで砂丘を掘ってデコボコになったかのように見えますが、海からの強風で砂丘が侵食されてできたのです。砂山に登ると、砂が顔にバチバチと当たり、立っているのも大変です。このようなところでは強風で砂が絶えず動いていて地形が変わるので、イソコモリグモはたぶん生息できないでしょう。
さらに南に進むと、道路と海岸の間に「コウホネ沼」という小さな沼があります。2008年11月12日の北海道新聞に「コウホネ沼消滅の危機」というタイトルの記事が掲載されていました。このあたりでは海岸浸食が進んでおり、絶滅危惧種のネムロコウホネが生育するコウホネ沼に高波で海水が侵入し、沼が危機的状況にあるとのことです。コウホネ沼から海に出てみると、あっと驚くような海岸になっていました。沼の周辺の海岸は写真のように護岸工事が行なわれているのですが、確かに高波がくれば海水が入り込んでしまうほど海岸と沼は接近しています。新聞記事によると、「8日の低気圧などによる高波などで海岸線が二、三メートル削られた」とありますので、このあたりの海岸はどんどん浸食されているのでしょう。
コウホネ沼から南の海岸に目をやると、まさに白波が岸を洗っている光景が見られました。これではコウホネ沼も危機的になるはずです。こんな風に海岸線が断崖状になってしまうと、砂丘があってもイソコモリグモは生息できなくなります。
北海道にはイソコモリグモの生息できる自然のままの砂浜が長距離にわたって残っているところが何箇所かありますが、生息地保全の最大の課題は海岸浸食と護岸工事かもしれません。
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