道警裏金訴訟の不当判決
昨日の記事では、愛媛県警の裏金を内部告発した仙波敏郎氏が裁判で勝訴したことにふいて触れましたが、北海道警察の裏金訴訟では去る4月20日にとんでもない判決が出ました。
道警の裏金問題では、北海道新聞社がキャンペーンを組んで果敢に取り組み、多くの道民に道警の不正を知らしめ高い評価を受けました。ところが、道新は2005年に掲載した「道警の泳がせ捜査失敗」の記事で「お詫び記事」を掲載して以降、道警に関する報道が及び腰になったのです。そして、あれほど頑張っていた道警関係の取材班は解体状態になっていきました。その後の紙面からは、道警に弱味を握られた道新が道警の意に沿っていくのが手に取るように感じられたものです。
そうした背景の中で元道警総務部長の佐々木友善氏が、道警の裏金問題を扱った書籍に名誉毀損の記述があるとして、出版社(講談社と旬報社)と道新記者2名を提訴したのです。その後、ジャーナリストの大谷昭宏氏と作家の宮崎学氏が、佐々木氏の提訴時の発言が名誉毀損にあたるとして損害賠償を求めました。
ところが4月20日の判決は、記述が真実であるとは認められないとして、計72万円の慰謝料の支払いを命じるという驚くべきものでした。また、大谷氏と宮崎氏の請求も棄却されたのです。
私も、「追及・北海道警察『裏金』疑惑」(講談社)を読みましたが、佐々木氏が名誉毀損とした部分はほんのエピソード的な記述にすぎません。このような些細なことで提訴するということ自体、裁判の目的が名誉毀損というよりも見せしめであることを示しているでしょう。どう考えても道警による反撃の提訴であり、訴権の乱用としか思えません。判決も、裏金問題の本質を見据えての判断とは思えず、権力に寄り添ったものであることは明らかです。この国の裁判所はどこまで権力に見方するのかと、唖然とするほかありません。こうしてマスコミによる権力の監視が、司法の手によって抑圧されていくのを目の当たりにすると憤りが込み上げてきます。
この裁判については、「市民の目フォーラム」のブログに詳述されています。
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» 道警幹部名誉棄損訴訟で証拠として提出された「マスコミ関係者」の見解って、記者クラブは抗議したのか? [情報流通促進計画 by ヤメ記者弁護士(ヤメ蚊)]
佐々木友善・元道警総務部長が裏金疑惑を暴いた道新などを相手に起こした名誉棄損訴訟の判決の不思議さは一度書いたことがあるが(http://blog.goo.ne.jp/tokyodo-2005/e/5532b0a690a29ad29388f0251acb50bb)、この訴訟で、佐々木友善元部長が、自分のことを書かれた道新の記事について、ほかのメディアの記者から聞き取りした見解をまとめたという書面を提出しているので、それを紹介したい。というのもこれを提出されたほかのメディアの記者は、この書面に対し、抗... [続きを読む]
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