十勝海岸のガンコウラン
ガンコウランは高山植物とされていますが、高山以外にも分布しています。たとえば、硫黄山(アトサヌプリ)ではハイマツやイソツツジとともにガンコウランの群落が見られます。というのはこれらの植物は火山地帯の酸性土壌にも適応できるからです。道南の恵山の賽の河原にはカーペット上の大群落がありますが、これも同様です。
標高がそれほど高くない然別湖などの岩塊地にもハイマツやイソツツジ、ガンコウランがありますし、根室地方では平地にガンコウランが分布していることが知られています。他の植物が入りこめないような厳しい環境でも生育できるのでしょう。決して高山にしか生育できないというわけではありません。
十勝地方の海岸部にもガンコウランがあるのですが、先日のイソコモリグモの調査でそのガンコウランの不思議な群落を見ることができました。はじめに見たのは、ホロカヤントウ沼の砂洲です。台地状に少し高くなっているところにありました。高波などの影響を受けないところなのでしょう。ハマナスや海浜植物と隣り合わせにガンコウランが茂っている光景は、ちょっと不思議です。ここは根室地方のガンコウラン生育地と同じような環境なのかも知れません。
それ以上に不思議な光景は、海岸の断崖上に、芝桜のようにカーペット状に広がるガンコウランの群落です。いったいどうしてこんなところにガンコウランの群落があるのでしょうか? かつてはホロカヤントウのように湿地の近くに分布していたものが、海岸の浸食などで内陸に後退し、今では断崖上にとり残されたのでしょうか? 植物の分布には、時として頭を悩ませるものがありますが、それがまた自然の面白さです。
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