河畔林は障害物か?
然別川の国見橋から下流にかけての河畔林(十勝川との合流点近くの両岸)が大規模に伐採されたとの話を聞いていたので、現場を見てきました(写真)。このあたりの河畔林はさまざまな野鳥の生息地になっていたとのことですが、もはやその面影はまったくなく、ケショウヤナギだけが残された無惨な姿になっていました。河川管理者である北海道開発局帯広開発建設部は、いったい何のためにこのような伐採をしたのでしょうか? そして、伐採された木はどう処理されたのでしょうか?
2006年11月21日の北海道新聞に「河畔林間引き」とのタイトルで、開発局が河畔林を間引きする計画を進めているという記事がありました。十勝や日高管内の河川を中心に台風などの大雨で大量の流木が発生し、定置網などへの被害が深刻化しているとのこと。道立林業試験場で2006年8月の大雨後に十勝川の流木を調べたところ、95パーセントは河畔林の流出によるものであることがわかった。このために開発局は豊平川や道内の一級河川で河畔林の間引きを計画しているという内容です。
この記事には驚きました。河川のことに詳しい稗田一俊さんによると、十勝川や沙流川の河畔林の流出原因は、河床低下による河岸崩壊だろうといいます。つまり、ダムなどによって流下すべき砂利が減少したり、流下する砂利の粒径が小さくなることで急速に河床が低下して川岸に段差ができ、川岸が崩壊することで木が倒れて流木となるというのです。開発局のいうように、増水によって河畔林が流されるのであれば河畔林はなくなってしまうことになりますが、実際にはそんなことはありません。
河床低下が見られない河畔林では、増水しても河畔林によって流速が弱められるために河畔林がなぎ倒されることはありません。開発局のいうように間引きをしてしまったら流速が速まり、残された木がむしろ倒れやすくなるのです。河畔林は流速を弱め、生物の生息地として役立っているのです。北海道新聞の記事は、このような視点が欠落しています。
ダムが河床低下を引き起こし、段差となった川岸が洗われて河畔林が流出しているのなら、河川管理者はまずこの点を反省し改善しなければならないでしょう。しかも、今回伐採された河畔林の川岸は、崩壊しないようにコンクリートで護岸されているのです(写真)。増水で川岸が崩れ流木が生じる場所とは思えません。しかも、ここは十勝川との合流点の手前ですから流速が弱まるところであり、増水したところで河畔林が流されることはないでしょう。意味のない伐採によって、生態系を破壊しただけです。
2009年3月14日の北海道新聞には「豊頃バイオマス研発足」という記事が掲載されました。「豊頃町木質バイオマス利用促進調査研究会」が、十勝川流域のヤナギを原料にしたペレット製造などの事業化を探っているというもので、この研究会には帯広開発建設部も入っています。
ここで伐採された樹木は、枝葉も残さずきれいに運び出されていました。バイオマス促進のために利用されたのでしょうか? 意味のない伐採によって自然を破壊し、それでバイオマス利用促進というのであれば、本末転倒でしょう。
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