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2009/05/14

ミズグモの雄と雌

 「ガラス蜘蛛とメーテルリンク」の続きです。

 この本の最後に「『ガラス蜘蛛』雑感」として宮下直氏が解説を寄せています。これを読んでいて「おやっ?」と思ったことがあります。多くのクモでは雄より雌の方が大きいのですが、宮下氏はミズグモでは雄が雌より大きいことをユニークなこととして取り上げていたからです。雄は雌を求めて活発に動き回るのですが、ミズグモの場合は水の抵抗が大きいためにパワーのある大型の雄が生き残ったためだろうという見解です。

 私の記憶では、ミズグモの雄と雌はそれほど大きさが違わないと思っていたので「雌より雄の方が大きい」という記述にひっかかりを感じました。たしかに「ガラス蜘蛛」には「雄は体長が十から十五ミリ、雌は七から十ミリある」と書かれていますので、雄のほうが明らかに大きいということになります。なんだか狐につままれた気分でいくつかの図鑑に当たってみました。

 Spiders of Britain & Northern Europe(Collins field guide)によると、雌が8-15ミリで20ミリを越えるときもあり、雄は9-12ミリとなっています。The country life guide to Spiders of Britain and Northern Europe (Country life) では、雌が8-15ミリ、雄が9-12ミリで雄はしばしば雌より大きいと記されています。British Spider (Ray society) では雌が約8-15ミリ、雄が約9-12ミリで、サイズは生息地によってかなり変異があるようです。日本の図鑑ではどうかというと、原色日本クモ類図鑑(保育社)では雌8-15ミリ、雄9-12ミリ。写真日本クモ類大図鑑(偕成社)では雌9-15ミリ、雄10-12ミリ。日本のクモ(文一総合出版)では、雄雌9-15ミリとなっています。

 これらの記載から雌より大きな雄もいるが、雌雄間でそれほど大きな差がないといえるでしょう。宮下氏はメーテルリンクの記述によって雄のほうが雌より大きいと判断したものと思われますが、雄のほうが雌より大きいと一般化することはできないようです。メーテルリンクがどのように大きさを測ったのかわかりませんし、たまたまメーテルリンクの観察した個体では雌より雄のほうが有意に大きかったのかもしれません。

 クモでは大半の種で雌のほうが雄よりも大型で、ジョロウグモのように雌が雄の数倍もある種もいます。雌が大きいのは産卵することが大きな要因ですが、雄は雌よりも先に成熟し、雌の網や住居の近くで雌が成熟するのを待っていることもよくあり、早く成熟するために脱皮回数を少なくしている場合もあるのです。その一方で、雌雄間で体長にそれほど差のないクモも結構いますし、小さい個体を比べたら雄の方が大きいという種もあります。イソタナグモやヤマトウシオグモなど、海辺に生息するクモもほとんど雌雄間で体長に差がないようです。

 こうして考えてみると、体長はどのようにして決まるのか、雌雄間の大きさの差はどのようにして決まっているのかなど、いろいろな疑問が湧いてきます。

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