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2009/05/22

渡辺勝利氏への反論 第4弾

 渡辺勝利氏は「ゼロイン・コラム」で、私のJanJan記事を批判する連載を続けています。彼は私の反論を読んだのかどうか知りませんが、読んでいるならほとんど理解できていないといえるでしょう。このような状況では、彼の反論に反論しても意味がないと感じました。

 私はあくまでも著者の視点から意見を述べていますが、渡辺氏はご自身の行なっている自費出版事業を基準にして意見を述べているので、見解に違いが生じるのは当然です。私は渡辺氏の「共同出版の実体は自費出版である」という主張も十分理解していますし、自費出版業者の視点から見たならそれが間違いだとも思いません。また編集で完成度を高めることで自費出版の本を流通させるやり方を否定しているわけでもありません。かつては私と同じ共同出版批判者でありながら、なぜこれほどまで著者の視点に立って考えようとせず私への批判にこだわるのか、理解に苦しみます。

 自分の視点だけが正しいと信じている渡辺氏には私が何を言っても永久に平行線であり、私の主張は「誤り」ということになるのでしょう。このような方に反論しつづけることは決して建設的ではないので、個々の見解に対する反論はやめたいと思います。

 ただし、渡辺氏が誤解のもとに誹謗ともいえる発言をされていることは心外ですので、指摘しておきます。たとえば以下の主張です。

 だから次のような馬鹿げた「指導」を著者にしてしまうのだ。

「著者が負担する費用の見積を出版社に任せてしまうのではなく、著者が印刷会社から見積をもらい印刷会社に直接代金を支払う。また編集やデザインは社内で行うのではなく外注にし、著者が編集者やデザイナーに直接費用を支払うなどの方法をとり、それ以外の経費は出版社負担とするなど、費用の支払いを明確にすべきです」(前出JANJAN記事)

 印刷と製本、編集とデザインを著者が別のところに発注することによって、出版費用の内訳を明確にすべきという論旨を松田氏は書いている。

 だが出版社とは編集、印刷、発行を一貫して行うところであり、それゆえ、著者が出版する場合の要望と利便性が賄えるところである。

 そもそもその利便性があるから著者は出版社と契約するのだ。著者にしても500部1000部の本をつくるのに、そこまで自分でやろうとする人が何人いるだろうか?それは特別な事情がある場合であり、それを一般的な水準としてもとめることは愚かである。

 かりに著者が編集プロダクション、印刷会社、製本所等と別々に契約をして本が出版できたとしても、ISBNの取得や取次会社との取引コードが取得できなければ、書店へ流通することはできない。松田氏のいう「リスク管理型商業出版」における出版社の役割とメリットが筆者にはよく理解できない。著者にとってはトラブルを減らすどころか手間が増えて返ってトラブルが増えることになりかねない。

 松田氏がこの記事で主張する共同出版問題の解決法とは、出版社の機能を否定することに他ならない。しかしもともと「リスク負担型の商業出版」を積極的にやろうとする出版社などいないのだから論理は空回りしている。誰にとってもメリットの無い不毛の論理なのである。

 この解釈には驚きました。私は著者自身が印刷会社や製本所等と別々に契約すべきだと主張しているわけではありません。あくまでも著者に一部費用を負担してもらう条件での商業出版において、「著者の負担する費目および費用の明確化」を提案したのです。ですから編集、印刷会社などの下請けへの発注、流通の手続きなど、諸々の実務は出版社が行なうことを前提とした話しをしています(このような費用の明確化は、渡辺氏の行なっている請負契約をする自費出版に適用できることではありません)。

 文芸社は私との契約において著者の負担は「制作費」だとして見積りの内訳を提示し、印刷製本費用は「印刷会社に見積りをとった」と説明しました(実際にはとっていないと思いますが)。ですから、その見積りを著者にも送付し、著者が印刷製本代金を印刷会社に直接支払うようにしたらどうかという提案です。新風舎では、DTP編集を編集プロダクションや個人の編集者に下請けに出すことがあったようですが、そのような下請けの費用を著者が直接支払うようにすることで著者の負担する費目と費用が明確になり、不当な請求がなくなるという意味です。同好会の会誌や学会誌の別刷代金(ふつうは著者負担)を、発行元の同好会や学会を経由せずに著者が印刷会社に直接支払うことも実際にありますので、それは不可能なことではありません。

 「渡辺勝利氏への反論 第2弾」で引用した沢辺氏の文章にもあるように、商業出版であっても著者に出版費用の一部負担等を求めることが広く行なわれているのが現実です。いわゆる共同出版の契約形態もそれと同じなのですから、負担費用の明確化を提案したということです。「もともと『リスク負担型の商業出版』を積極的にやろうとする出版社などいない」と主張される渡辺氏は、商業出版社の実態をご存じないとしか思えません。

 渡辺氏に今一度考えていただきたいのは、文芸社が恫喝ともいえるやり方でJanJanに私の記事の削除を要請したという事実です(「削除にこだわる通報者の怪」参照)。記事に納得できないことがあるのなら、なぜ文芸社自身が言論で対峙しないのでしょうか? なぜ、文芸社は「共同出版・自費出版の被害をなくす会」の質問書に回答しないのでしょうか?

 それから私のブログ記事の削除要請&非公開問題です(「ブログ記事の削除要請は正当か」参照)。共同出版に関わる私のブログ記事を削除させたい人物がいたということは間違いないでしょうし、それは文芸社に関係する者としか考えられません。削除要請された記事には、渡辺氏への反論記事も含め、共同出版の費用問題に関する記事が複数含まれています。私の主張は悪質な商法を行っている出版社にとって、非常に都合が悪いということにほかならないでしょう。名前も明らかにできない「通報者」が、私の記事に対して言論で対抗するわけではなく、問題箇所を具体的に指摘するのでもなく、ブログ運営会社へ削除要請して抹殺させようとしたことの意味を考えるべきです。

 客観的に物事を見られる人なら、これら削除要請事件が何を物語っているのかを容易に見抜くことができはずです。渡辺氏には、今でも悪質な出版社に騙され被害を訴えている著者がいるということ、新風舎の倒産後も状況は何も変わっていないということを十分認識していただきたいと思います。

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いろいろな視点 

文芸社の思惑 

渡辺勝利氏への反論 第1弾

渡辺勝利氏への反論 第2弾 

渡辺勝利氏への反論 第3弾

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