冬山造材のなごり
山を歩いていると、ときどき地際から高い位置で伐られている切り株を見かけることがあります。それらの切り株の多くはかなり太い木で、苔に覆われていたり半ば朽ちかけていたりします。かつての冬山造材の伐根なのです。
今のように山奥まで林道や作業道がつくられていなかった頃は、造材といえば冬の仕事でした。雪が深く積もっているときに伐り出すために、切り株の位置が高いのです。そして伐り出した丸太は馬などを利用して雪の上を滑らせて降ろしたのです。このために林床を傷めることはほとんどなかったといえるでしょう。奥山まで砂防ダムが造られるようになったのも、急斜面に林道や作業道をつくって土砂の流出を加速させたからです。
写真の伐根は大雪山国立公園の標高1000メートル近いところのものですが、昨年は夕張岳の登山道でもこのような伐根をたくさん見かけました。直径が1メートル前後の切り株もあり、かつての森林には巨木が茂っていたことを物語っています。太い木からどんどん伐りだしていったということです。
山の中でときどき、「ここは人が手を加える前はどんな森だったのだろうか」と思うことがあります。それほどまで北海道の山は奥地まで伐採が入り太い木が伐りだされてしまいました。かつて山で仕事をしていた人たちは、夏場はものすごい蚊やヌカカ、ブユの襲撃に見舞われたといいますが、今では登山をしていてもそのようなことはほとんどありません。森林の環境が大きく変わってしまったのでしょう。
これからは失われたかつての森林を蘇らせる努力をしていかなければならないのではないでしょうか。
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