格差と犯罪
昨日のNHKスペシャルは「職業“詐欺”」というショッキングなタイトルで、振り込め詐欺に関わる若者の姿を追ったものでした。
マンションの一室で携帯電話を利用してあちこちに電話をかける主犯グループ、ATMからお金を引き出す者、銀行口座や携帯電話を入手する役目の者。主犯格の者は捕まらないようになっている巧みなシステム。犯罪行為に手を染めながら罪悪感のない若者・・・。
あれだけマスコミが報道して注意を呼びかけている振り込め詐欺が一向に減らず、犯人がなかなか摘発されないのは、このようなシステムがあったのです。
ATMからお金を引き出す役目の者や、銀行口座を提供してしまう者の背景には、貧困に陥っている若者たちの姿がありました。職を失い無一文のホームレスになった若者などが、捕まる確率の高いお金の引き出しなどの役割を担っているというのです。一回で数万円が手に入るという誘惑にかられて犯罪に手を染めてしまう若者たち。彼らはほとんど罪悪感がないそうですが、罪悪感を持てなくなってしまっているのでしょう。それは何故なのか?
職を失った途端に何の保証もなされず路上に放り出されてしまう若者たちに罪はありません。職を失い住む場所を失っても何のケアもされない社会で、彼らはどうやって生きていけばいいのか。格差社会がもたらした貧困が罪のない若者を犯罪に導いているのです。アメリカの新自由主義に追随して格差を広げてきたこの国の政治こそ、振り込め詐欺をもたらし蔓延させたといえるかもしれません。主犯格の人たちは詐欺で得たお金で豪遊し、生きるためにそれを手助けする貧困層の若者たち。犯罪に罪悪感を持たなくなるのも社会の荒廃と無関係ではないはずです。
虎の子の貯金を騙しとられてしまった方たちはどんなに悔しい思いをしていることでしょう。人を騙して大金を巻き上げてしまうことはもちろん許されないことです。しかし、格差社会は他者の痛みを考えることのできない人々、犯罪を罪悪とは感じない人々をどんどん生み出しているのではないでしょうか。それは決して自分とは無縁の世界のできごとではありません。
この荒廃した社会を私たちは立て直すことができるのか・・・。年越し派遣村では失業者とそれを支援する人たちのあたたかい気持ちと行動、協力があったはずです。そんなことをふと思いだしました。
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