生態系がサービスをするのか?
「生態系サービス」という言葉を聞いたことがあるでしょうか? 私がこの言葉をはじめて耳にしたのは、昨年6月に札幌で開催された国際シンポジウム「救おう!森のいのち 考えよう!森の未来」での、中静透氏(東北大学生命科学研究科教授)の講演でした。
中静氏は、例えば里山が花粉を運ぶ昆虫や農作物の天敵となる昆虫の生息地になっているという例などをとりあげ、それを生態系サービスと称していました。その時は、なんともしっくりこない表現だなあと思ったのです。
その後、北海道新聞の魚眼図というコラムで、柳川久氏(帯広畜産大学准教授)が生態系サービスのことを書いていました。どうやらこの言葉は最近よく使われるようになった、半ば流行語のようなもののようです。柳川氏の説明では、「われわれをとりまく多種多様な生態系から人間が享受することのできる、さまざまなサービスのことを示す」ということです。自然界の生物からもたらされる経済的なものから、癒しなどの精神的なもの、あるいは災害の発生を抑えるような自然の機能のことです。
これを読んで、「なーんだ、要するに自然の持つ公益的機能のことじゃん!」と思ったのですが、これに生態系サービスという言葉を当てはめるのは私にはどうもピンときません。なんだか、自然が人間のために奉仕しているかのように感じられるのですもの…。生態系の持つ公益的機能というほうがはるかにしっくりときます。
人類が狩猟採集生活をしていたころ(今でもそのような民族はいますが)、人は生態系にすっぽりはまりこんだ生活をしていたのです。自然からの恵みは生活の糧そのものでした。今でも漁業などはそれに近いですね。自然のサイクルの中で人は生きているのです。きれいな空気や水なども…。そして、自然はなにも人間のためにサービスをしているわけではありません。あるがままにそうなっているだけです。
機能(物の働き、作用)をサービス(奉仕)だと解釈して使うことに違和感を覚えざるを得ません。
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