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2009/01/20

高山帯はどうなるのか?

 18日は、先にお知らせした工藤岳さんの講演会「大雪山の高山生態系の仕組みと地球温暖化の影響について」に参加しました。お話しの内容は盛りだくさんで、高山環境と高山植物の特徴、高山生態系の仕組み、高山植物と虫との関わり、地球温暖化と高山生態系と多岐にわたりました。

 大変興味深い内容でしたが、やはりショッキングだったのは最後に話された地球温暖化の影響です。工藤さんは1980年代後半から大雪山で研究をされてきましたが、人の影響がないところで植生に大きな変化が生じており、地球温暖化の影響である可能性が高いのではないかといいます。

 過去20年間のデータによると、大雪山の高山帯では雪解け日(平均)が早まってきているそうで、それが植生に影響を与えているそうです。

 一例として紹介されたのが、五色が原です。五色が原は、私も1980年前後に2、3回訪れていますが、ここはハクサンイチゲやチシマノキンバイソウ、ホソバウルップソウなどが咲き乱れる広大なお花畑の斜面として有名なところでした。ところが17年の間にハクサンイチゲの群落がイネ科の草本に置き換わってしまったのだそうです。以前の様子を知っている者にとっては、ちょっと信じがたいことです。その原因は、雪解けの加速によって乾燥化が進んだために乾燥に強い植物が進入したのだろうとのことでした。

 またチシマノキンバイソウの群落にはチシマザサが侵入してきたとのこと。こちらも19年間の間にすっかり様子が変わってしまったそうです。草丈が高いチシマザサが勢力を拡大すると、ほかの植物は衰退してしまうのです。過去30年の間に、高山帯ではチシマザサの分布が14パーセントも拡大したそうで、これも異常なスピードです。

 雪解けの加速によって高山植物の生育環境が変化したり、開花の時期が早まったり、成長速度が速くなったり、花粉を運ぶ昆虫との関係に変化が生じたりなどなど、生態系にさまざまな影響がでてきます。

 それにしても、たった20年足らずで植生がすっかり変わってしまうというのは驚くべきことです。おそらくこのような変化は誰も予測していなかったのではないでしょうか。こうした事態を懸念して、世界各地でモニタリング調査が始められているそうで、大雪山でも気温上昇による植物の変化を調査しているとのこと。

 これだけはっきりと温暖化の影響が現われているということは、かなり深刻な事態ではないでしょうか。10年後20年後の高山帯はどうなっているのでしょうか? 今以上にお花畑がササとイネ科植物に侵略されているのかもしれないと思うと、ゾッとしてきます。

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