批判と反論
昨日の記事で紹介した上杉隆氏の「ジャーナリズム崩壊」に関連し、批判とそれに対する反論について書きます。
上杉氏によると、ニューヨーク・タイムズでは、どんな小さな記事にも記者の署名が載るそうです。日本の新聞とは大違いですね。上杉氏は当初、ベタ記事にも記者の署名が載ることを「浅ましい」「自己顕示欲の表われ」と感じていたそうです。ちょっと意外でしたが、それが日本人の一般的な感覚かもしれません。日本で匿名ブログが多いのも、「自己顕示欲」だと思われたくないという意識が強いのかもしれませんね。
上杉氏は、署名記事についてニューヨーク・タイムズの支局長の以下の話しを引用しています。
「記事は常に責任が生じるものだ。取材・執筆した記事に対しては最終的に責任を負わなくてはならない。もし責任を負えないというのならば、その記事は書かれるべきではない」
もっともだと思います。
とことで、上杉氏は、最終的なジャーナリストとしての仕事は「権力の監視」だという認識から、批判は「公人」および「準公人」に限るという取り決めを自らに課しているそうです。「公人」は税金収入を得ている者で、「準公人」は反論手段をもっている者とのこと。そして書かれたことに不満があれば反論すべきだという考えです。言論には言論で対抗しろということですね。ちなみに、アメリカでは連日、ジャーナリストの批判合戦が繰り広げられているそうです。
私もこのブログやJANJANで会社や団体、個人などを名指しで批判しています。私の場合、相手が社会的に影響力を持っていることと、反論の場を持っていることが批判対象の条件です。
たとえば出版関係では、文芸社や新風舎などの共同出版社、リタイアメント情報センターのような団体、尾崎浩一氏や柴田晴廣氏、高石左京氏、江川紹子氏などを批判してきました。文芸社やリタイアメント情報センターはホームページを持っており、いくらでも反論できます。尾崎氏や江川氏はジャーナリストですから、ネットだけではなくマスコミでも反論できるでしょう。柴田氏も高石氏もブログで発言していますから反論の場があるのです。
ところが、不思議なことに誰も反論しないんですね。とりわけリタイアメント情報センターや尾崎氏、柴田氏のように重大な疑惑を指摘されている人が反論しないというのは、身の潔白を証明できないとしか思えません。
尾崎氏はかつて自らが編集長を努めるリタイアメント・ビジネス・ジャーナルで、新風舎の賞ビジネス、著者を惑わすセールストーク、費用(折半という説明)、クレジットの問題などを取り上げて新風舎批判を大々的に展開しました。ところが、これらの問題は文芸社でも生じているのです。尾崎氏は文芸社を批判しない理由を説明する社会的責任があります。
しかも、リタイアメント情報センターは、ガイドライン賛同事業者に所定の情報開示を求めているのです。なぜそれらを公開しないのでしょうか? 文芸社はなぜリタイアメント情報センターには情報開示をしているのに「共同出版・自費出版の被害をなくす会」の質問には回答しないのでしょうか? リタイアメント情報センターも文芸社も説明責任があります。
尾崎氏は同誌(2006年12月1日版)で私のことを取り上げ、「特に松田まゆみさんはこの問題に関して長年にわたり研究され、自分でもネット新聞に記事投稿を続けている数少ない研究者の一人である」として、JANJANの記事も紹介しているのですね。共同出版批判では私は無視できない存在であることを認めていながら、その後はJANJANの私の記事は一切無視しています。なぜでしょうか?
そして、私の指摘している文芸社との癒着疑惑についてなんら反論をしないのです。ジャーナリストとは思えない無責任さです。もし「独自の見解を主張している個人など相手にしても仕方ない」などというのであれば、それこそ見苦しい言い逃れでしょう。個人のブログもJANJANの記事も、NPO法人のホームページも、インターネットによって世界に発信していることに変わりありません。
そういえば「創」12月号の森達也さんの記事によると、江川紹子さんは、「創」11月号での森さんの反論に対し「こういう挑発に乗る気はない」と創の編集長に伝えたそうです。「反論」を「挑発」というのには恐れ入ります。私は、彼女は反論できないのではないかと感じました。どう考えても、江川さんの批判は森さんの発言を十分理解しておらず的外れなのですから。
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