海岸侵食と絶滅危惧種
今日の北海道新聞に、稚内市浜勇知のコウホネ沼周辺の海岸侵食が進んでおり、沼に海水が流れ込んだような跡がみつかったとの記事が掲載されていました。海水の浸入が続けば、絶滅危惧種のネムロコウホネだけではなく、沼の存続も危惧されます。
http://www.hokkaido-np.co.jp/news/environment/128629.html
私は、昨年から機会あるごとに海岸でイソコモリグモ(絶滅危惧種)の分布を調べてきたので、新聞に掲載されているような写真を目の当たりにしてきました。狭い砂浜と波で削られて段丘状になった海岸の光景です。こうなってしまうと、イソコモリグモの生息は非常に厳しくなります。
新聞では、1954年と比べると海岸線は約130メートル後退したとのことですが、同様の後退はいたるところで起こっています。あちこちで後退を防ぐための護岸工事やテトラポットの敷設が進んでおり、自然の海岸線は姿を消しつつあります。残されているところも、砂浜の幅がどんどん狭くなっているのです。
新聞記事では、8日の低気圧による高波などで海岸線が2、3メートル削られたとされていますが、もちろん海岸線の後退は荒波によるものだけではありません。これまで何度も書いてきましたが、ダムで土砂がせき止められるために、川から土砂が供給されなくなっているのです。
10月に調査に行った石狩浜でも、それを実感しました。石狩浜は石狩川の河口から銭函まで約25キロメートル続く長大な砂浜です。しかし、その中央あたりに石狩湾新港が建設されました。現場に行くと、石狩湾新港の東にはある程度の幅の砂浜があるのですが、西では砂浜がやせ細り海岸線がどんどん後退していることが実感できます。銭函の東にある海水浴場では、海の家も内陸側に移動しているのです(写真)。
石狩川からの土砂が石狩湾新港によってさえぎられ、それより西に運ばれないことが砂浜の侵食に大きく関係しています。イソコモリグモは、かつては石狩浜全域に広く分布していたと考えられますが、今では海岸侵食と海水浴場で西部は絶望的な状況です。
稚内市は、貴重な財産を将来に残すために関係機関と協議の場を持ちたいとしていますが、希少な動植物が分布している海浜の生態系自体が壊れつつあるのですから、護岸を強化すればいいという問題ではありません。
土砂が海岸に堆積するような方策を考えて浸食を押さえ、海浜の生態系そのものを保全しなければ海浜やその近くに生息する絶滅危惧種を保全することはできないのです。
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