ダムに殺された然別川(2)
昨日の記事の続きです。
現場の3の沢に行くときは然別川にそっていくのですが、川を眺めていて下流と上流で川の水量が大きく違うことに気づきました。
河川では上流より下流の方が水量は多くなるのが当然です。ところが、下流部はとても水量が少なくて勢いがないのに、上流部ではとうとうと水が流れているのです。これはどうしたことでしょうか?
その原因は発電施設にありました。然別川の東には然別湖という天然の湖がありますが、北海道電力はこの湖の水を導水管で引いてきて然別第一発電所で発電に利用しています。本来であれば、発電に利用した水は然別川に入って然別川の水量を増やすことになります。ところが、発電所の下に堰があるのです。そして然別川の水と発電に利用した水を集め、なんと導水管で十勝川にもっていっているのです(この写真は然別第一発電所と取水堰)。
このために、然別第一発電所を境にして上流では水があるのに、下流では水がほとんどなく川が流れていません(この写真は取水堰のすぐ下の然別川。水がほとんどなく流れていない)。
この然別第一発電所の堰に集めた水は、途中で然別川の支流(ピシカチナイ沢川とオソウシュ川)の水を取り込み、さらに十勝川の支流であるオソウシ川の然別第二発電所を経て、岩松ダムの上流の上岩松発電所で利用され、十勝川に流れこんでいます。
本来、然別川を流れなければならない水が、途中で取水されて十勝川に入ってしまっているのです。それは発電に利用するためにほかなりません。然別川の水を途中から十勝川水系に流してしまうことにより、然別川の河川生態系は大きく破壊されたのです。
こうして考えてみると、然別第一発電所の上流に巨大な砂防ダムをいくつもつくった理由が見えてきます。つまり発電所の取水施設を大水の被害や堆砂から守るためではないでしょうか。
発電施設を守るための巨大な砂防ダムによって魚は遡上を阻まれ、発電のために水を盗まれた川は本来の河川生態系を失ってしまったのです。然別川は、まさにダムによって殺された川なのです。
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