エゾイチゴで緑が回復?
今週は日本弁護士連合会の自然保護部会の弁護士さんたちが幌加とタウシュベツの皆伐地の視察に来たり、日本森林生態系保護ネットワークの伐採調査があったりで、ちょっと忙しくしていました。
日弁連は士幌高原道路や日高横断道路のときにも現地に視察に来ていますが、今は森林伐採問題についても取り組んでいるようです。6日は林野庁の職員の方たちに現地を案内してもらったそうですが、前日の5日には自然保護団体が弁護士さんたちに大雪山国立公園での伐採の問題点などについて説明しました。そして7日には自然保護団体のメンバーなどが現地で説明をしたのです。
タウシュベツの皆伐地の昨年(左の写真)と今年の(右の写真)の様子を比べてみてください。両方とも10月初めに撮ったものです。今年のほうが緑色の部分がいくぶん増えています。林野庁の職員はこれを指して「緑が回復してきている」と、弁護士さんたちに得意げに説明したそうです。
確かに緑色の部分は多くなっているのですが、これはエゾイチゴという木苺やハンゴンソウという植物なのです。もともと針葉樹林の中に生育しているのではなく、開けた荒地や林道の脇のような明るいところに生育する植物です。土場などを放置したあとにしばしばエゾイチゴやハンゴンソウが入り込んで繁茂していることがあります。エゾイチゴは木本で高さが1メートルほどになり繁殖力が旺盛です。ハンゴンソウはエゾシカが食べないのでどんどん広がっていきます。
このような植物に覆われてしまうと樹木の種が周囲の森林から飛んできても、生育するのが困難になってしまうのです。緑が回復してきたなどといって、喜んでいるようなことではないんですね。裸地になったところにササが繁茂してしまうと更新困難になるですが、それと似たような状況になってしまいます。
エゾイチゴがここに残っていたということは、以前から林道や作業道沿いにこのような植物が入り込んでいたということでしょう。皆伐によって明るくなり、植生がはがされてしまったためにそれが広がってきたのです。
植林したトドマツの苗は活着不良のものが多く、枯死してしまったものもあります。そのうちエゾイチゴに囲まれ覆われてしまうかもしれません。
このまま放置したらもとのような針葉樹林になるのに相当の年月がかかるでしょう。稚樹をそのまま残しておけば、ずっと早く再生できたのです。エゾイチゴやハンゴンソウが茂って喜んでいるようでは、林野庁もかなり末期的というしかありません。
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