リングプルと車椅子
最近、北海道新聞の十勝版で気になる広告を何回か見かけました。十勝管内の北海道新聞の販売所で空き缶のリングプル(プルタブ)を回収しており、リサイクル業者を通じて車椅子と交換して管内の各施設に寄贈するので協力してほしい、という内容の広告です。リングプルを車椅子に交換するという話、よく耳にしますよね。新聞などでもたまに取り上げられています。
以前からとても不思議に思っていたのですが、なぜ空き缶本体ではなく小さなリングプルだけを集めるのでしょう? そしてなぜ決まりきったように車椅子と交換するのでしょう? 疑問に思いつつも、身近にリングプルを集めている人がいないこともあって、調べることもしませんでした。その謎が解けたのは今年の夏になってからです。
「広島仮説サークル・いどの会」の方が送ってくださった冊子に、リングプル集めについてのことが詳しく説明されていました。要約すると以下のようになります。
以前は、缶入り飲料のプルタブ(リングプル)は本体から取れてしまう形態であったため、人の集まるところなどでプルタブが散乱した。それを野鳥などが飲み込んだり、砂浜などで人が踏んで怪我をする事故が増えたため、環境保護団体がプルタブ回収運動を始めた。せっかく集まったプルタブを何かに使えないかと考え、換金して車椅子でも購入してどこかに贈ろうということになった。この話を聞いた善意の団体がプルタブで車椅子を贈る窓口になり、そのスタイルが続いている。
もともとは環境問題という側面から始められた回収だったのです。でも、今はプルタブが缶から離れない形態になって、プルタブだけが飛散するということはなくなりました。もうプルタブ回収の必要はありません。ところが当初の目的から離れて一人歩きしてしまった「プルタブ集めと車椅子」だけが、今でも続いているということです。
プルタブを集めるためにわざわざ缶からプルタブの部分だけを引きちぎらなければなりませんし、一台の車椅子と交歓するために膨大な数のプルタブを集めなければなりません。とても無駄なことをやっているといえます。しかも、最近はリサイクルが徹底されてきましたから、以前ほど空き缶が捨てられなくなっているはずです。
福祉施設などに寄付をするのはいいのですが、それだったら空き缶本体を集めて換金した方がよほど効率的でしょう。それに車椅子にこだわる必然性もまったくありません。現金でもほかの物でもいいのです。
新聞販売店が今でもこんな形骸化した無意味なことを行い、新聞広告まで出していることに首をかしげざるを得ません。
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