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2008/09/21

私のウイルス体験

 「共同出版のビジネスモデルは未完成?」のコメントで、αさんがコンピューターウイルスについて触れています。そこで、以前にも少し触れましたが、私のウイルス体験を紹介しましょう。

 私が文芸社とトラブルになったのは、7年前の2001年11月下旬でした。文芸社の編集内容と請求された編集費に疑問をもった私は、文芸社の契約担当者と編集者に対してメールでいくつもの質問をしました。

 疑惑を持たれた出版社としては、回答できる質問から速やかに返事をするのが誠実な対応というものでしょう。編集担当者からは順次回答がきたのですが、肝心の契約担当者は何度催促してもなかなか回答しようとしませんでした。そして12月7日になって「10日にまとめてご質問にお答えいたします」というメールがあったのです。

 3日前に回答日を予告するとは何とも不可解です。

 さて、予告のあった日の夜に、ようやく回答のメールが送信されてきました。その翌日のことです。メールソフトを開いたところ、送信者のわからない怪しげな添付ファイルつきのメールが受信されたのです。それまでこんな怪しいメールは受け取ったことがありません。ウイルスが添付されているのだろうと察しがつきました。その頃はメールアドレスを知っている人は限られていましたから、非常に訝しく思いました。

 回答日の予告があり、回答のすぐ後にウイルスと思われるメールがきたのですから、この絶妙なタイミングに意図的なものを感じざるを得ませんでしたね。

 実はこれまで公にはしてきませんでしたが、私は文芸社の人物を刑事告発したことがあります。このブログでも書いてきたように、騙して契約させて76万もの編集費を請求しておきながら、「完成度が高い」との理由でろくに編集作業をしていなかったのですから。

 とにかく、あの頃は文芸社の実態が次第にわかってきて怒りに燃えていましたし、文芸社が渡辺さんを提訴したという暴挙で怒りが頂点に達していました。いわゆる被害者意識が強かったのですね。

 はじめは管轄の警察署に告発状を送付しました。2003年6月のことです。その後の8月5日に、メールでウイルスが送られてきたのです。差出人名は、やりとりしていた文芸社の編集者と同じ「henshu55」と表示されていて、タイトルは「Hi!」となっています。本文は空白で添付ファイルがありましたが、それがウイルスでした。その当時はウイルス対策ソフトを利用していなかったので、自動的に削除されなかったのです(もちろん添付ファイルは開かなかったので感染はしませんでした)。そのためにこのメールのデータを検討することができました。そのデータによると「bungeisha.co.jp」から送信されたと判断できるものだったのです。

 送られてきたウイルスについて調べてみると、アドレス帳や各種ファイルなどに記録されているメールアドレスに対して、自分自身のコピーを大量に発信するタイプのものでした。ですから、文芸社のパソコンがウイルスに感染したことで自動的に送られてきたのかもしれません。でも、それにしては不思議なことがあるのです。

 私がやりとりをしていた「henshu55」のリターンパスでは@の後ろのドメイン名はbungeisha.co.jpですが、ウイルスが添付されたメールのリターンパスはまったく異なり、会社のものではありません。とても不思議です。告発状を発送した後というタイミングでしたし、私には自動的に送られたというより意図的なものではないかと思えたのです。

 このウイルスがどのような働きをするのかを調べてみたのですが、なかなか悪質なものでした。ウイルスに感染すると、ウイルス対策ソフトやファイアウォールを強制終了させ、「トロイの木馬」形式のバックドアをインストールします。その「トロイの木馬」は外部との通信を行うのです。

 感染すると、バックドア型ハッキングツールとして、パソコン内の情報を盗み出すことができます。また、ファイルのダウンロードとか、ファイルのコピーやデリート、ファイルの検索など、いろいろなことができるようです。文芸社の告発状がパソコンにあれば、見ることもできそうですね。

 さて、告発状を受け取った警察官はまじめに取り組もうという姿勢が見られません。そこで私は警察署から告発状を引き上げ、2004年の1月に東京地検に告発したのです。東京地検は告発状の不備を2度にわたって指摘してきたので、私は2度も告発状を書き直し7月26日付けでようやく受理されました。

 結局は2005年7月に不起訴の知らせがきましたが、告発状を送付してから不起訴の通知が届くまでの間に何回もメールでウイルスが送られてきたのです。それはランダムというより、一時期に集中して送られてくるという不自然な状況でした。途中からはファイル添付型ではないタイプのウイルスメールもきました。

 また、メールではなく、ネット接続した際に「トロイの木馬」タイプ、つまりハッキングタイプのウイルスばかりが頻繁にきたこともありました。

 もちろん、ウイルスはいたるところに飛び交っていていますし、自動的にメールアドレスをつくってランダムに送る場合が大半でしょう。しかし、以上の不自然な経緯を考えるなら、意図的に送られていたものもあるのではないかと疑わざるを得ません。

 さて、刑事告発のあと、私はインターネット新聞JANJANの存在を知ったのです。そこで2005年の9月から12月にかけて10回の連載で共同出版の記事を投稿しました。

 その後、ちょっとドッキリすることが起きました。2006年の2月か3月のことだったと思うのですが、JANJANがサイバーテロに遭って数日間システムがダウンしたのです。いったい誰がどんな目的でJANJANに攻撃をしかけるのでしょう? もちろん誰が仕掛けたのかはわかりませんが、もしかしたら私の記事が原因になったのではないかと思い、内心ショックを受けたのは確かです。もちろん、それは私が勝手にそうかもしれないと思っただけですが。

 余談ですが、東京地検のいい加減さには開いた口がふさがりません。ひとつは、告発者である私に対して問い合わせのひとつもしなかったことです。また、不起訴の通知がきたときに、私はもちろん書面で理由を問い合わせました。その「理由告知書」に何と書かれていたと思いますか? 驚くなかれ「嫌疑なし」の一言です。

 ならば「嫌疑不十分」というのも不起訴の理由になるというのでしょうか? 「嫌疑なし」とか「嫌疑不十分」が不起訴の理由としてまかり通るのであれば、捜査などしなくても不起訴にできます。そこで、担当検事に「嫌疑なし」とした理由を具体的に説明するよう書面で問い合わせましたが、回答はありませんでした。検察など実にいい加減なものだとつくづく感じたものです。

 その一方で、「立川ビラ事件」のようにごく軽微なことを無理やり立件してしまうのが検察庁というところです。

 もっとも今は、共同出版問題を刑事事件として追及すべきだとは考えていませんし、不起訴になって良かったのだと思っています。もし起訴されて倒産ということにでもなっていたら、大勢の被害者を出すことになりましたから。

 それに、この商法は文芸社だけの問題ではないのです。碧天舎や新風舎が潰れても同業他社が存続しているように、商法全体の問題として多くの人に知らせ、世論を高めていくことこそ必要だと考えられるようになりました。

 自分が騙されてカッカとしているときにはこんな風に考えられなかったのですが、ちょっと視点をずらしてみることが大切だと思えるようになったのです。

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