シマフクロウの営巣木にシラカバ?
昨日の北海道新聞に「フクロウすむ森に」と題する記事が掲載されました。
記事の内容は、日本野鳥の会が「子どもレンジャーワークキャンプ」という行事で、シマフクロウのすめる森をつくるために、同会の「野鳥保護区ソウサンベツ」(根室市)でシラカバの植樹をしたというもの。22人の参加者が110本のシラカバの苗木を植えたそうです。
新聞記事には「同会によると、植えたシラカバが、シマフクロウが巣を作る大きさになるには、百年以上の年月がかかるという」と書かれています。
思わず「ええっ! ちょっと待って!」といいたくなりました。
シラカバは成長が速い樹木で、寿命は80年程度です。大木になって樹洞をつくるような木ではありません。100年もしたら植えたシラカバは寿命が尽きているでしょう。
シマフクロウは、営巣木となるような樹洞のできる広葉樹の大木が伐られてしまったこと、河川にダムや堰がつくられて餌となるサケなどの魚が遡上できなくなってしまったことなどで、北海道の森からどんどん姿を消していき、絶滅危惧種になってしまいました。今では120~130羽程度しか生息していないといわれています。
環境省はシマフクロウを絶滅の危機から救おうと保護増殖事業を行っています。給餌を行ったり巣箱をかけて繁殖を手助けしているのです。近年ではその成果もあって、場所によっては個体数が増えてきているところもあるようです。
ところが問題なのは、シマフクロウが棲めるような環境がないのです。いくら増殖事業を行っても、増えた個体が定着できる森がなければ意味がありません。巣立ったシマフクロウがいつまでも給餌場近くに棲んでいたら、兄弟同士の近親交配という問題も生じます。
また、将来的には人による保護事業なしにシマフクロウが生きていける森づくり、川づくりを目指さなければならないでしょう。そのような意味で、シマフクロウの棲める森づくりをしていくことは意味があります。
ならば、当然のことながらかつてシマフクロウの棲んでいた森を復元させるような取り組みがなされなければなりません。大木になって樹洞のできるようなミズナラなどを植樹するというならわかりますが、樹洞とは縁のない短命のシラカバとは・・・。
ちょっと考えさせられるというか、唖然としてしまうような記事でした。
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